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しずくちゃん

(絵のない絵本・対象年齢、生後3週間〜)


しずくちゃん

雨上がり、湿気のある居心地の良い葉っぱの上。

そこにしずくちゃんとその仲間たちがいました。

しずくちゃんたちはおしゃべりをしたり
おしくらまんじゅうをしたりして
楽しく暮らしていました。

しずくちゃんのいる葉っぱの隣には
紫色の葉っぱがいました。
まだ小さい葉っぱですが
とても不気味な雰囲気の葉っぱです。

ある時、少ししおれた紫色の葉っぱは
予言を言い残してそのまま枯れてしまいました。

「今後、豪雨によって大洪水が起こり、
大いなる源へ還元されるだろう」

その言葉にしずくちゃんたちは恐怖しました。
なんとかしようと行動しますが、
予言通り大雨が降り、
流されてしまいました。

「あーれー」

しずくちゃんは他の仲間たちと
おしくらまんじゅう状態です。

「あーれー」

クルクルと流され流され、
目を回してしまいました。
原型を保つのに必死です。

流され切った先には
大きな海が広がっていました。

ぷかぷかぷか

海の真ん中に浮いていると
しずくちゃんがとっても大きくなった気がして、
恐怖も不安もなくなりました。

しずくちゃんは
ただ波の赴くままに漂っているだけでした。
ですが、なぜかそれが
とても自然なことだと理解していました。

波に乗っているととても心地が安らぎました。
クジラに飲まれそのまま吐き出されても、
それがあるがままの姿として
受け入れることができました。

全てを受け入れたしずくちゃんは
海における全ての情報を
いつでも知ることができるようになりました。

そしていつしかしずくちゃんは
個としての原型を保つのをやめ、
ひとつの海になりました。


おわり

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