この世に善意だけで近づいてくる人はいないから、そこを見極めることが友情を育むには重要なんだと知った新卒の私

わかった。もうじゃあ無理だね。今だから言うけど私はあなたが嫌いで
同期に悪口言ってたんだよね

そう言われてこの世に友情を構成するものに綺麗なものなんてないんだと思った。

私は田舎出身で就職のタイミングで都会に来ることになった。
電車に乗って都会の交差点に蠢く人の量を見た時に間違って声を出してしまったのを覚えている。

それほど人の数が違ったのだ。
都会は良い。
SNSで話題のお店にはすぐ行けるし、腕の良い美容師さんがいっぱいいるから髪型が変になることもない。
美味しいお店もあるし、舞台もライブもイベントも夜行バスなんて苦行を乗り越えなくても参加できる。

何より人に干渉されないのがいい。

田舎で生まれた人あるあるなのではと思うけれど、田舎は人が少ない分距離感が近い。
おそらく都会に住む人が田舎に住めば、ハラスメントじゃね?と思うくらいには近いのだ。
それ自体が悪いわけでは決してないし、相性がよければユートピアだ。
ただ私にとってはディストピアだったってだけ。

親のしがらみもなく、干渉されることもなく入社まで一ヶ月間は悠々自適に暮らしていた。
けれど、途中から寂しくなった。
あれほど人に干渉されるのが嫌だったのにゼロになるとこうも気持ちが変わるのかと自分のことながら驚いた。
我ながらめんどくさい人間だ。

そんなこんなで入社式当日。
私は友達を作ることを目標に張り切っていた。
今思えば社会人が学生みたいなノリで迎えるなよと思うが、でもこの前まで大学生だったのだ。
すぐに切り替えることなんてできない。

その後研修があり、なんだかんだで3人の友達ができた。
そして4人でいることが増えたんだ。
4人の構成だが一人だけ異性がいる状態で、仮にAさんとしよう。
私たちのリーダーはAさんでこの子が基本的に行動の指針を決めていた。

ある日、こっちに友達が0人なんだよねって話をしたんだ。

え、じゃあ毎週遊ぼうよ

そう言ってくれた。
すごく嬉しかった。友達を作ることは得意じゃない。
ゆえに友達も少なかったから、例えようがないくらい嬉しかった。
こういうきっかけから一生に親友ができるんだろうなと胸を躍らせて、
来るかもわからない未来にワクワクした。

きっと大人になってお互いの家族ができて、子供同士遊ばせてなんて
そんな夢想をしていた気がする。

それからは毎週集まって遊んだ。
テーマパークに行ったことがないと言えばAさんが率先して連れてってくれた。
仕事終わりに毎日電話もしていた。

なんて優しい人なんだと純粋な私は思っていた。
ある時にBさんが言った。

Aさんのことが好きなんだよね

その相談を受けてとても嬉しかった。
大好きな友達二人が付き合うかもしれない。
それはなんて素敵なことなんだろう。
ぜひ手伝わせてほしいと言ったことから地獄が始まってしまった。

それからはBさんがAさんと付き合えるように手伝ったりフォローを入れたりをした。

ただいつからだろう、Aさんと電話するのがしんどくなってきた。
気がついてしまったんだ。もしかしたらAさんは自分のことが好きかもしれないという事実に。

というのも電話で好きなタイプの話になったときに私に当てはまっていることを言うようになったり、
休みの日に懐かしのタピオカ屋さんで買ったタピオカをLINEで送ると、
絶対異性といるでしょとやきもちのような反応をされるようになった。

ただ当時に私は付き合った経験もあまりなく、異性との絡みもあまりなかったので
それが好意かどうか判断できなかった。

先入観とは怖いものでAさんが自分を異性として見るわけがないと思っていたから、その好意ムーブも自分の自意識過剰なんだと頭で変換していた。

ただBさんの件もある。
あまり電話はしないほうがいいだろうと勝手に距離を置いたことが関係悪化を加速させた。

ある日なんで電話をしてくれないのかと聞かれた。
Bさんには悪かったが変にこじれることを恐れた私は言わないでほしいんだけどと念押しをした上で行動の理由を伝えた。

なんで、Bの手伝いをするの?

質問の意味がわからなかった。
そりゃ上手くいってほしいからだよと素直に答えてしまった。

そこからAさんの声色は急に変わり、なんで毎日電話したのか、なんで毎週会っていたのかわからないのかと問い詰められることになった。

そこにきて全てを理解した私はAさんに好意がないことを伝えた。

わかった。もうじゃあ無理だね。今だから言うけど私はあなたが嫌いで
同期に悪口言ってたんだよね

なんでそんなことを、、、と思ったけれど今ならわかる。
遊ばれたと思ったAさんは遊ばれたんじゃないんだという事実にすることで自分を守ろうとしたのだ。

確かに私の行動は良くなかった。
好きでもない異性が毎週好きなところに連れて行ってくれたり、
毎日電話したりするなんてよくあることではないだろう。

でも私は勝手に異性の親友ができたんだと。
漫画みたいな関係性ができたんだと錯覚していた。

その後四人グループはちりじりになっていった。
私の想像していた未来が来ることはなかった。

その後なんとかしようと思ってAさんに謝罪の電話をした。
自分がどう言う気持ちで接していたのか。
弄んでいたわけじゃなくて、本当に気が付かなかったと。

でも、怒りは収まらなかった。

人が人に近づくときは基本的に綺麗な理由はないと思ってる。
その人といれば旨みがあるからとか、自分の価値を上げられるからとか
気持ちがいいからとか

自分本位の理由がほとんどなのだ。
自分本位の理由を汚いと言ってしまうのはちょっと語弊がありそうだな

他人本位で人に近づく人がいないって言うほうが私が伝えたい気持ちに近い気がする。

でもそれってすごく当たり前で、きっとちゃんと人間関係をしてきた人は学生の頃に気がついてるはずなんだ。

私も感覚では理解していたけれど本当の意味では理解していなかった。

大人になると友達を作るのが難しい。
理由は色々あるけれど友達になるための条件が多くなってしまったり基準が高くなってしまうからだろう。

だからこそ友達が少ない私は友達を作ることを目標に動いてしまっていた時期があった。

友達って会う頻度が多い人が友達だと思っていたから無理に時間を作ったり、相手に都合をつけてもらったり無理をして友達を作ろうとしていた。
Aさんたちの事件をきっかけに私は友達が一生できないと思ってしまったんだ。

でも、うまくはいかなかった。
友達でもなんでもお互いのニーズが一致しないと成立しない。
無理に一致させようとしてもどこかでガタがくるのだ。
だからこそ相手のニーズは何なのか。自分に提供できるのかが重要だ。

きっとそんなことも世の中の人は学生時代で知ってたんだろうなと
新卒の私は家で泣いていたのを部屋を整理していたときに思い出したっていう話でしたとさ

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