好意から始まったのに求めるだけになってしまった末路はどんな過程を得ても地獄に向かってしまうんじゃないだろうか

もっとお前の本音を見せてほしい、なんで見せてくれないんだ

当時、上司にそう言われて内心思ったことは「うるせえ」だった。

そんな記憶が想起されたのは仕事とは関係のない駅のホーム。
会社帰りに最寄りの駅に着いた時だ。
改札前の少し先にカップルが口論をしていた。

〇〇の気持ちが全然わからない!
ちゃんと本音で話してよ!!

多分、大学生くらいだろうか。
泣きながら彼女は彼氏にそう言っていた。
彼氏は周りが気になるのかチラチラと周りを見ながら、どうどうと宥めていた。
大変だなと内心思ったのと同時になぜか昔の上司との1on1を思い出した。

そういえば、昔似たようなこと言われたっけ

頭に浮かぶのは社内の1on1ルーム。
月に一度の1on1で上司からその発言をよくされた。
当時はよくわからなかった。
もちろん猫は被ってはいたけど、
別にそこまで取り繕っているわけではなかった。

だって会社で働く以上、自我を出しすぎるのは御法度。
特に大した能力のない私が出したところでいいことなどない。
かの有名なナポレオンは言った。
真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」と。
無能な自覚がある私はせめて厄介なやつにはなるまいと思っていた。

だから足手纏いにならないように努力はしたし、優秀と言えないまでも
求められる実績はしっかりと出していた。
そして、空気の読めない私は厄介な異物にならないように猫を被っていた。

だから困った。私は猫を被らないと会社員ができなかったからそれを剥がせと言われたような気がした。

だから思ったのだ「うるせえ」と。

今ならわかる。彼が言っているのは猫を剥がせと言っているのではなく
「俺を安心させろ」と言っているのだ。
その答えがわかれば安心させる行為をすればいいのだ。

例えば「実は〇〇さんにしか言えないんですが、、」と冒頭につけて、悩みを話す。
合っているかはわからんが、この時の悩みは重くなくていい。

軽い悩みというよりかは、もはや解決策が自分の中で出ている緊急性が高くないものでいいのだ。

例えば「〇〇さんにしか言えないのですが、正直キャリアのことが悩んでいて、、」と悩んでないけど言うのだ。
茶番だと思うだろう。世の中茶番だらけだ。合理的な不合理というやつだ。

私もこういうのすごい無駄だと思うし、だるいし、だから人間関係めんどくさいなと思うけど仕方ないのだ。

少し脱線するが、こういう類の人間は本当にめんどくさい。
盛り上がっていないからという理由で酒を催促するやつと、本音を教えてほしいというやつはすごく嫌いだ。

お前の力不足で盛り上げられていないのに!本音を引き出せていないのに!
こっちが悪いみたいにしないでほしい!

まぁ、賢いやつはこんなこと考えずに〇〇さんにしか言えないのですが的な行動を取れるのだろう。
これ高校くらいから気づいているやついるけど、ほんと人生何度目なんだろう。

と少し脱線しましたとさ。

文章にすると長々となったけど頭で思考すると一瞬で考えが浮上し、勝手に消えて
もう違うことを考えてしまう。

私は改札前のカップルを見てそう思ったのちに、カップルという関係性から
別の考えが刺激され想起される。

大学生の頃。
好きな人がいた。グループの中では人気な人で幸運なことに付き合うことができた。

おっと、今から自分の過去の武勇伝を語ると思ったでしょう。
安心してほしい。結論から言うとボロボロに自滅して失恋をする。

私は恋愛経験が皆無でもはや恋愛漫画を参考に脳内でしか恋愛をしたことがなかった。
だからその人が初のパートナーだったわけだ。
素直に好きになってもらう努力をすればいいのだが、
変に拗れて相手が求めるものを全て答えるようにした。

車が好きだと言えば、私も興味があると嘘をついて家で勉強したり
話題のYouTuberが好きと言えばまた嘘をついて、家でずっと見漁るみたいな
間違った答え方をした。

素直に知らないから教えてと言えばいいのだ。
でも、嫌われるのが怖かった。もっと好きになってほしかった。
求めていたんだ、もっと好きになってくれと。
求めるだけという点においては上司と同じだ。
手段が違うだけ。

上司は言葉を使い直接的に求める。
私は嘘をついて理想の相手を演じ、間接的に愛を求める。 

先に結論を言ってしまったのでそれまでの過程を話すのはやめておこう。
面白くないし、興味もないだろう。
要するに求める心が強い人は地獄に向かうのだ。

上司の根本は不安の払拭だったけれど、シンプルに私の味方になりたいという好意を持ってくれてたのだと思う。
書き方が下手なあまり悪い上司のように映ったかもしれないが、そんなことはない。

でも、求めるばかりの人は地獄に向かってしまうんだよなと思う。
そんなことを考えている間に自宅に着いた。

玄関にゴミ袋があった。
昨日まで地元の友人が泊まりにきていて、捨てててくれると言っていたゴミ袋だ。

なんで捨てててくれないんだよ、、、

と思った刹那に恥ずかしくなった。
私もちゃんと愚かな地獄に向かう民だったってことだ。

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