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初夏の頃(13)会話

初夏の頃(13)会話
ピアノを弾いた後、料理の前に彼女は着替えていた。
それは、胸元が大き目に開いた濃い黄色、マンゴー色の半袖のタンクトップ!
ランチタイムはダイニングで楽しく会話した。
「軽井沢は好きですか?」「大好きかな!東京の湿気が苦手。」「僕もです。」
「暑い日も在るけど、朝夕は涼しい。」「霧も好き。乾いた風と明るい光。
電話も余り掛かって来ないし、てっ言うか、余り教えてないから。」
「僕も、電話掛かっても居ないしね!」と笑った。
「此処まで来る行程も好きかな、電車でも、車でも。」
「最後の碓井峠がなんだかワクワクする。」
「そうだね、それは凄く解る。登り切る頃から急に空気が変わるでしょう。」
「去年までの国鉄のアプト式の古い路線も好きでした。横川駅について駅弁の釜飯を買って、のんびり食べる。
登山電車って感じで、トンネルもアーチ式の橋も。」
「でも、アーチの橋見るなら旧道の方から見た方が見えるね!あのレンガのアーチは歴史を感じる。」「明治時代に此処まで鉄道敷いて、しかもアプト式で!」
「ご存知ですか?日本で最初に電化されたのは横川〜軽井沢間なんですよ。」「そうなの?鉄道好きなの?」
「大好きです。親父、国鉄マンだし!」「そうか。」
「電化する時に電気を送る為の火力発電所や水力発電のダムまで作ってるんです。」
「それ知ってる!あのダムそうなんだ!」
「軽井沢の古いホテルとかって良いですよね!三笠ホテル、万平ホテル、晴山ホテル。どこも夫々に風格在るし歴史も感じる。教会も沢山在りますね」「もう、明治に教会は在ったし、昭和の初めで5つも!」
「軽井沢を別荘地にしたのはイギリス人で慶応大学の教授で宣教師だったから、教会は歴史も在るし立派だね。シンプルな木造のも素敵だし」
「外国人は昔から多かった。最初の頃は外国人の避暑地だったから日本人の別荘は少なかったらしい。美味しいレストランも沢山在るし、ゴルフ場とかテニスコートとか、歴史と雰囲気が違うかな?日本の中でも特別だね」

「草軽電鉄が走っていた頃に来たかったな〜」
「私は少し知ってるかな?」
「軽井沢から草津温泉まで走ってたんだから凄いですよね!」
「そう、確か?電化になる前は蒸気だったって聞いたな。レース場は今でも少し残ってるの!今度行こうね!」
「浅間火山レースですよね、車じゃなくてバイク!モーターサイクルですよね。」
「日本のオートバイの耐久力を高めたレース場ですね。」
「ダートだよ!??砂利道!!浅間高原牧場、こないだ行った、もう少し先に有る。」
「クレソンってこの辺りに沢山在るんですか?」
「ある!チョットした道の横にある小川みたいな渓流のような場所に、いくらでも。」
「イイ所のは、ホテルのシェフがあの格好のまま摘みに来てる。」
「嬬恋に近い方は高原野菜だからアスパラもレタスもキャベツも沢山在るし、当然、ジャガイモ人参タマネギも!」
「佐久とか上田とかは蕎麦もおいしいし。水がいいからね」
「冬も来るんですか?」「殆ど来ない!気が向いたらね!閉じ込められるし、私の車では無理だから。」
「でも、春先から秋までは来るよ!」
「志賀草津道路は行った事在る?」「一度だけ!あります。」
「志賀高原はスキーに行くと熊の湯に行くので!」
「あの道いいよね!日本一高い高原道路だし50Kmぐらい在るんだよね!飛ばすと最高!」
「いいね!夏休み中遊ぼう!」二人して喜んでいた!
「射撃も見たいな〜!」「ここの射撃場って戦前から在ったらしいよ。今とは違う場所に!」
「クレー射撃は私しか出来ないけど、ヒロシも空気銃、エアライフルなら確か撃てると思う。」「集中力とかタイミングとか決断力とか、達成感とか自己反省とか」・・・・・・・「自分に雑念がある時にメンタルが強くなるしある意味、メディテーション=瞑想かな?」

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「オーロラソースにパプリカ振れば良かったね!ドレッシングも美味しかった!」
「トマトライスが吃驚!これ大好きです。」
「バターと塩だけだからね!トマトパワーを感じる。」
「夏の食欲の無い時でも、楽々食べられるメニュー。」
「ピカタも美味しかったですね!グラッセも!」
「ナイフの持ち方が素敵ですね。」「そう?良く観てるねって・・・そうか。」「女性っぽい持ち方で上品な感じもして。」
「小さい頃からあの持ち方かな?普通の人の持ち方だと肘が上がっちゃうでしょ!」
彼女の持ち方は鉛筆を持つように、それだけで確かに肘が下がるのだ。
「お腹いっぱいだけどデザートは??」「はい!食べます」(笑)
「私が昨日作ったシャーベットが在るよ!あとはオレンジのパウンドケーキ!それと、マロングラッセ!」
「シャーベット頂きます。マロングラッセも!」そして、ロイヤルミルクティーをリクエストした。
僕は食器を片付け食器洗い器に入れて、彼女はデザートをセッティングしてロイヤルミルクティーを入れてくれる。
デザートを食べながらも会話は続く

「音楽もよく聴いてるね!クラシックは好きなの?」
「幼い頃は母が、イギリス民謡と言われてる庭の千草とかよく歌ってくれました。家に蓄音器があって、それで遊ぶ感じで聴いてました。広沢虎造の遠州森の石松とか、その中に父のレコード、SPですが、カルメンとか結構大好きで聴いてました。直ぐ覚えちゃうし」
「本当は小学生の頃は声が低くて音楽が嫌いで、音楽鑑賞の時にモルダウを聴いて、心を奪われました。詩的なメロディーラインとかスメタナが曲を書いた意味とか知ってからは、もっと好きになりました。それからは父のレコードを聴きハイフェッツのバイオリンとかバッハの無伴奏チェロとかモーツアルトやベートーベンのピアノとかやたら聴いてました。」
「中学生からはギターを始めた事もあって、セゴビアとかジュリアン・ブリュームとかの演奏家のLPレコードを、自分で買ったり、ギターは友人と3人で始めたので、その友人のレコードを借りたり貸したり。」
「その頃、家にステレオが、兄が働き始めて購入したのですが、ギターを始めた3人の家にそれぞれステレオが来て、よく3人で音楽鑑賞しては音楽談義、してましたそれで一気に作曲家や、演奏家の弾き方や音楽の解釈とか、熱く語り合いました。」
私の話を彼女は関心を示して聞いてくれた。
「そうなんだ、広沢虎造って覚えてる?」
「江戸っ子だってね〜神田の生まれよ〜クイね〜食いね〜寿司食いね〜」
濁声で節をつけながらそっくりに真似した。
二人で笑い転げた。

食器を片付けてから、二人はシャワーを浴びた。

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5日目AM-PM


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