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初夏の頃(22)暖炉とダンスと

初夏の頃(22)暖炉とダンスと
話終わると彼女は起き上がって暖炉の前でバスローブを脱いでだ。
暖かい光の中で彼女の体は美しい彫刻のように見事にデフォルメされた様に均整の取れた完璧な美しさを、私の脳裏に焼き付けた。
揺らめく暖炉の火に背中やお尻を向けて、踊る様に手を広げ、ゆっくりと回り始めた。そして、手招きする。バスローブの僕の体はまだ熱を持っていて、早く脱ぎたかったから、その誘いに乗った。全身、裸で二人は静かに距離を保って互いを見せ合っていた。
アダムとイブとは違う私たち二人は何も隠さない!
隠す必要はない!恥ずかしくはない!
彼女も私の全身をまじまじとくいいる様に情熱的な目で見!僕も彼女を見逃すまいと全ての映像を焼き付けていった。
それは、フラメンコの踊り手が互いの踊りを見せ合う様に、相手の動きに呼応して蝶々発ししながら、見せつけ合う様な。
やがて二人は近づいて誘惑する様に、でも、ギリギリ触れ合う事を避けながら反り返り、挑発して挑む。
表情は真剣だ、どれだけ私は貴方を愛しているか?
命を懸けて愛しているかを伝える為に眼差しは真剣なのだった。
魂を捧げ合うような、命を差し違えるような愛なんだ。
その瞬間を互いに分かっていた様に手を互いの体に巻き付け、腰を支えた男に身を任せて上半身を反り、次の瞬間、二人は間近に見つめ合い、やがて、ゆっくりと、きつく、きつく抱き合った。そして静かに唇を合わせた。
しばし、無言だった。少し汗ばんだ湿った肌を抱きしめ合っていた。

彼女は口を開いて!「星を見に行こう!」
二人は、暖かい服装に着替えた。
外は、ひんやりと冷えていた。真夏の夜とも思えない引き締まった空気だ。
手を繋ぎ少し歩いて針葉樹の林を出て、清泉寮の牧草地の方に向かった。
手を繋ぎ空を眺めていた。満点の星、天の川は手に取るように見える。
スーーーーっと星が流れた。
それを同時に見て、同時に無言で見つめ合い、微笑んだ。
シリウス!三つ星、オリオン、Wカシオペア、昴、ポラリス北極星!
指を指して言えるのはそのくらいだった。
ピッタリと身体を寄せ合い、牧場の太い柵の上に並んで座っていた。

ゆっくりと抑揚を抑えながら話し始めた。
「僕は人を愛したこともなかったと思うので、これが愛なのかとか?良くわからない!正直、初めてお会いした時に33歳と聞いて、15歳も年上、僕の中ではOBASANNというイメージでした。」
「今は、そんな事は何も感じません。ただ、好きです。これが愛なら熱烈に愛してると思います。本当はいつも一緒にいたくて、離れたくなくて、心の奥底がキリキリと締め付けられるように痛くて、必死に堪えてます。
男の強がりで平静を保ってますが、嬉しくて嬉しくて、舞い上がって踊り出したいくらいでした。二人が物凄く心も体もフィットしてるのを感じます。
あの出会いに感謝してます。こんなに素晴らしい人に出会えたことに感謝しています。」

「あのさ〜人と人の出会いって不思議だけど、偶然にいろんな人と出会って繋がりや関係とか、偶然が多過ぎて、何度も同じ人とあり得ない場所で偶然に出会うと、たぶん?偶然は本当は必然で、出会うべくして出会ってるって解ることある。きっと神様の計画なんだと思うけど、神様の悪戯かもしれないけど、それがソウルメイトかと感じることがある。
いつでも、誰にでも親切にしたいとか良い行いをしようとか思っても、誰にも気持ちよく出来ずに、恥ずかしかったり、素直になれなかったり、まして、嫉妬とか妬みとか比較とか羨む心とか負の心を持つと、その偶然も必然も、きっと手にできないと思う。
もし偶然か必然かの出会いがあって道がそこに示されたとして、その時に、この人って!閃いた瞬間に、勇気を出して、言葉にしないと運命の扉は開かないと思う。
だからさ!ヒロシ君はとても普通に凄い!と、私は天から音が降りてくる、あの瞬間の閃きを感じて、スッと一瞬で惚れたんだ。きっと。迷いなんてなかった。
ヒロシ君とのSEXでエクスタシーの絶頂感を感じるとこの世じゃないと思えるし、運命の人と完全な繋がりと一体感が次元の異なる世界観を垣間見てる気がする。あれは神の領域だと思う。チベット密教のカーマスートラとか空海が躊躇した精神世界。本当に愛し合うって、こういうことかなと、私も初めて感じた。
この満天の星空の下で宇宙と一体になってる感覚だよね。」


ロッジに戻ると、熱い珈琲を入れて飲んだ。暖炉の前に座り珈琲が体に入る
と温まった。
「少し聞いていいですか?イメージできなくて。」
「留学するとどんな生活になるのかなぁ?」
「私の考えだと、イギリスのロンドンに行って英語学校に通って、出来ら、他人と話せる場所でアルバイトをした方がいいと思う。その方が上達が早いから!
部屋は街中にして、学校に歩きか自転車で通えた方がいいかな?
車を使いたくなったら、ロンドンからは少し離れてるけど私のMiniが知り合いのお城に置いてある。そこの私の部屋にも泊まれる様に話しておくから、自由に使って!きっと美味しいご飯も用意してくれる。サーの称号の貴族だけどとっても良い人。そう、軽井沢ゴルフ倶楽部の支配人の大親友。
学校とアパートと生活費は心配しなくて良い。渡航手続きや入学手続きもサポートするけど、出来るだけ自分でやるほうが面白い、将来役立つ!
私は、南フランスだから、会いたければ、何かあれば、すぐに会える。」
「心配?」
「何も心配はしてません。あまりに恵まれ過ぎて、怖いです。
夢から覚めるんじゃないかと?
ゆっくり考えてみます。両親は話せば分かってくれると思います。」

暖炉の薪を目一杯くべて、それぞれのベッドで眠りについた。

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