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初夏の頃(20)ロッジ キャビン 2

初夏の頃(20)ロッジ キャビン 2
「ヒロシ、お風呂のお湯、入ったと思うから、先に入って。出たら、私も入る。」
私は察して、先に入った。バスタオルとタオルは沢山あって、バスローブもあった。
キャビンは全てログハウスのような部屋でお風呂場は暖かい湯気が充満して水蒸気たっぷりで呼吸は気持ちいい。熱目のお風呂は疲れた体を癒してくれた。バスローブを着て出た。

冷たい水の入ったコップを手渡された。「入ってくるね!」
彼女は長い時間かけてお風呂に入っていた。ロングドライブで疲れていたと思う。
キャビンには本が置いてあった。英語と日本語の聖書とキリスト教の本。
そして、英語を中心とした洋書、そして、日本の観光地を紹介した英語版。
壁には日本地図と世界地図、その横には地球儀も。
そうか、此処はキリスト教の宗教関係の人や外国からの旅行者とかアメリカンフットボールやボランティアの人が来ることが何となく蔵書を見ているだけで理解はできた。
外は虫の音がすごい。時々、ふくろうかミミズクの声も響いてくる。

ベッドの上に寝転んでベッドの横の電気をつけて本を眺めていた。
世界は広いよな〜少年の頃の漠然とした不安や自信のなさやコンプレックスで押し潰されそうな気持ちが何となく懐かしさと共に蘇った。
それは、此処数日に起きた大人の世界、隠され遠ざけられていたことで感じていたSEXへの罪悪感。それが、自分の中で100%肯定されて、素晴らしいこと、生命の不思議とともに、気持ちが前向きに元気に、いやエネルギッシュに漲る人生への挑戦みたいなものをひしひしと感じていた。

それと同時に、彼女への熱き想い、告白してはいけないと感じる想い。そして、多分、夏休みが終わる頃には、もう、会うことも無いことが明らかな運命的なもの。そう考えると、心は軋むように、砕かれてしまうであろう熱愛を、とても愛おしく感じた。その後に自分は受験生としてやっていけるのだろうか?漠たる不安に押し潰されそうだった。

ベッドの横に彼女もバスローブで立ちスルリと横に入ってきた。
「ヒロシ君今日は出来ないけどごめんね!」
「大丈夫、全然期待してません!」笑
「姉達もいるし、その辺のことは察しがつきます。」
「ご兄弟のこと、敢えてきちんとは訊かなかったけど、聞いてもいい?」
簡単に家族構成を伝えた、6人兄弟、男3人女2人、末っ子の私。
一番上の兄はNewsweekの極東支社。私以外はみんな働いてる事。
父は国鉄マン。母は専業主婦で趣味に生きてる。父を筆頭にスキー気狂いの家族。
「お兄さんNewsweekか〜ご結婚は?」「してます。子供が生まれたばかり。初孫です。しょっちゅう出張でNYやワシントンに行ってます。」

「私のことも聞きたいよね!父も母も兄弟もいません。父の残した抱えきれない財産で、お金には困ってません。その沢山の財産の行方で今は振り回されるけど大体は決まった、かな。財団を設立して、恐らくコレクションした美術品を所蔵する美術館を建てる。不動産は管理会社に面倒なことは任せる。会計事務所と弁護士事務所に監査法人とか面倒な事を全て任せたら私は解放される。2度と面倒なことにはならないように今頑張ってる!
全く性には合わないからね!でも、音楽活動と並行して。将来にはボランティア団体とかも設立したいかもと思って、その資金はスイスに。
アフリカとか難民とかどう救えるか?それが私の使命感を燃やせる事だと考えてる。結婚はしない!男はいらない!」
「嘘〜!」と私

「君はもう直ぐ18だよね。
私は今年の末には多分?南フランスの家に行く。活動拠点はヨーロッパにしたいんだよね。残念ながら日本では私の演奏したい音楽はまだ理解されない。ラフマニノフとかスクリャービンとか、観客と社会と文化構造が違うんだよね、日本でも努力はしたいけどさ。」

「そして、此処からは、このところずっと考えてきた事で、ヒロシの人生を左右する相談です。
留学する気持ちはありませんか?
全て、私がサポートします。ご両親ともじっくり相談して欲しい。
Newsweekのお兄様はお仕事柄、英語でお仕事ですよね!」
「はい!英語は兄嫁も!」
「ヒロシ君は英語を学んで、それから留学して欲しい!あなたは素晴らしい物を持っていると思う。それをもっと、もっと可能性を広げて欲しい。
此処からは、勝手に私が考えた事だから、参考にするだけで、自分で考えて欲しい。先ずは、イギリスに語学留学する。頑張って1年でマスターして欲しい。兎に角、クイーンズイングリッシュでなきゃダメ!
そしてイギリスの一流大学に入って欲しい。
気持ちを整理して、突然の提案だけど、じっくり考えて欲しい。」

「先日、軽井沢ゴルフ倶楽部に行ったでしょう。交換したディフェンダーの持ち主はゴルフ場の支配人であそこを全て掌握してる人。」
「?あの麦わら帽子で長靴の?」
「そう、とても素晴らしい、偉い人、あの格好で地元の働いてくれてる農家の人たちと一緒に草むしりしてる。人間の価値は着てるものや格好じゃないって知ってる。そして、あの人はケンブリッジに留学してた。
奥様も素敵な人で、私は大好き。」


「そして此処からは・・・・・・オフレコに!
世界はある基軸で動いてる。
フリーメイソンは知ってる?」
   「秘密結社で男性しか入れない?くらいですが。」
「そう、口約束で、絶対に秘密を守り、互いに協力してすべき事をする。
日本にもメンバーは居るし、ロッジもある。私の父もそうだった。
私はメンバーではないけど、協力はしてもらえる。
実は、軽井沢の家も、彼らが目に見えない所で監視してくれている。
あの家にも美術品として文化としても価値あるものが沢山あるから。
そして、私の手を離れた資産や財産も同様にメンバーが父の意向を尊重して目配りしてくれるから、安心していられる。」












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