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その枝は雁皮だった

毎日のように自転車で通っている里山の小さな峠へと続く野趣のある旧道。数年前、その道べりの斜面に一叢、なぜかその場所だけに、萩に似た少し洋種の表情の低木が枝を伸ばしているのに気が付いた。枝先にはミニチュアのユリのような形の可憐な花が集まってついている。さっそく植物名検索アプリを使ってみたが、どうも要領を得ない。そのころ詠んだ歌に「山ぎわの崖地に生ゆる灌木の小さき花の名をしらまほし」とある。ここでしかお目にかかれないし、アプリも手を焼くとなれば、誰かが持ち込んだよほどの珍種なのだろうと、探索をあきらめていたところ、昨年の秋、法面の草刈りが行われ、あっさりと姿を消してしまった。無残にも根元から伐られてしまったようだった。あーこれで、再び芽吹かなければ、結局名前を知ることもなく、スマフォの中の写真に姿をとどめるだけになってしまう。
しかし、山の木は強い。翌春にはしっかり枝を伸ばして、そしてまた花をつけてくれた。うれしかった。そのうえ、近ごろ入手したアプリをかざすと、遂に、この愛すべき灌木の名を知ることができた。雁皮。古代から和紙の原料に使われてきた由緒ある植物らしい。いつまでもしぶとく生き続け、あわよくば勢力を伸ばせ。

和紙の三大原材料② 雁皮(がんぴ)
雁皮(がんぴ)は、生長すると2メートルほどになる、ジンチョウゲ科の落葉低木です。石川県より南側の、西日本に広く分布しています。夏の初め頃に、黄色く小さな花が密生して咲きます。生産は、少なく山に自生している木を使いますので生産量は少ないです。
雁皮の歴史
古くから紙の原料として使われていたといわれています。江戸時代にいたるまで、鳥の子紙という名で、紙の王として知られていました。平安時代には、かな文字を書くのによく使われていたようです。また、さらに古くには、日本で雁皮から作られた紙が、唐に献上されたという記録も残っています。
雁皮の使用用途
雁皮で作る紙は丈夫で虫の害に強いため、古くは貴重な文書に使われていました。しかし、今では、その用途ではほとんど使われなくなりました。現在は、写経用紙や手紙によく用いられています。また、岐阜県で作られる伝統工芸品の、岐阜うちわに用いられている和紙も、雁皮が使用されていることで有名です。

楮(こうぞ)・雁皮(がんぴ)・三椏(みつまた)とは?和紙の原材料をご紹介! | BOTANICA (botanica-media.jp)
雁皮の花 ©まさし野.Life

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