『現代アニメのターニング・ポイント』第一回講義録

早稲田エクステンションセンターで2014年5月11日より5回シリーズで始まった、アニメ評論家 藤津亮太さんによる講座『現代アニメのターニング・ポイント』。その第一回を受講しましたので、簡単な講義録を上げておきます。

1回目の今回は「現代のアニメの状況とは」と題し、まずはアニメを取り巻く現状の確認と、2000年代以降、現在の状況が形成されるに至った過程をおさらいする内容でした。テキストのパラグラフを抜き出すと以下になります。

1.2014年春アニメの概況
2.2000年以降の変動状況
3.いつからアニメの歴史における「現代」なのか
4.『涼宮ハルヒの憂鬱』で起きたこと
5.劇場版の状況 → OVAの復権
6.ネットとの関係性
7.「現代のアニメ」とは
8.「現代」を構成する要素はクリエイティブにどう影響するか

2000年代のアニメを巡る状況の変遷では、制作本数、ビデオ売上げ等の推移を見ながら、2013年が2000年代で2006年に継ぐ2番目に多い制作本数にもかかわらず、1タイトルあたりの制作分数は減っていること、パッケージの売上げは横ばいだが、配信を加えると右肩上がりに伸びていることを確認し、その背景を見ていきます。

続いてDVD/BDプレイヤー&レコーダーの普及率や原作の多様化、U局へのシフト(波料の安さとリーチする範囲)、TVや映画のヒット作等のデータを追い、2006年を分水嶺として、2007年以降「現代=現状にとても近い状況」が発生した事を確認します。

代表的な成功例として『涼宮ハルヒの憂鬱』(ネットとのリンク)、『空の境界』『ガンダムUC』(ODSの成功)のケースを見ながら、かかるチャンネルの増加や形態の多様さにより、ウィンドウが広がったことで、かつてのOVA(TV以上、劇場未満)が復権したのではないか検証しました。

次にYouTubeやニコニコ動画、ツイッター、定額アニメ配信サービスなどネットサービスの変化とアニメとの関係性を見た後で、改めて (1)OVA的な物が復権し、(2)U局1クール傾向が伸長し、(3)ネットとの関係性が強まった2007年以降が「現代のアニメ」と呼べるのではないか、そしてその「現代」は売上げが配信へとシフトする中での過渡期ではないか、という今回の講義の結論に。

最後に「現代」を構成する要素が制作サイド、視聴サイドにどう影響するかを考えて今回の講義は終了。今回は概略を急ぎ足で説明する形になりましたので、次回は各論について、もう少し踏み込んだ検証をおこなう予定とのことです。