古川日出男『アラビアの夜の種族』書評<序>
6月半ばの日曜日、雨のすきまの曇天の中、私は愛する電動自転車にまたがり今出川通を突き走っていた。
待ち受けるのは、最近顔を出していない研究室の、しかし私が幹事をつとめる飲み会(正しくいうと同窓会というくくりの集まり)だった。
店先に着くとすでに3、4人の参加者が集まっていた。元来小心者の私は、“学校に行っていない”ということに由来する気まずさをできる限り気取られぬよう、挨拶を発し(「こんちわっす」)、下卑た笑みを浮かべてみる。けれど、世間の大多数がそうであるように、彼