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vol.3 不実な恋愛の行く末…

たった一度の、それも数秒間のキスが私達の恋心に火を付けた。
連日続く…いや、5分と置かずLINEのやり取りが続く私達の気持ちには拍車が掛かっていた。

ある日の晩に…

キスをしてしまった罪悪感。
確かにそれはあったのだ。相手は人妻、子供達は同じ保育園に通う友達同士なのだから。
彼女がどんな気持ちだったのか定かではないが、少なくとも私は[不倫]となることは望まなかったはずなのだ。

ある日、子供達がまた食事に行きたいとオネダリを始めた。
帰宅時間も遅いし、正直食後の後片付けは億劫でもあった私は喜んでそれに応じた。
彼女もそれは同じようで、外食をすることは反対しなかった。
しかし、旦那が帰宅するという連絡が入っているというので、その日は我が家だけでの外食となったのだ。

子供達がメニューを眺め、店員が注文を受けにやって来た時だった。

-パパが帰らないって今連絡が来て…
どこでご飯食べてる?-

すぐ近くのラーメン屋にいたのでそれを伝えると、彼女は自分達のオーダーもしておいて欲しいと送ってきた。
程なくして店の扉を潜る2人が現れた。

「何でいつもこう自分勝手な都合を私達に押し付けてくるのかな…」
「旦那?」
「帰るから晩御飯作っておけって連絡があったの。コレ見てよ。」

彼女の携帯には、「帰宅する 飯」「呑みに行く」という短文が送りつけられていた。

「なにこれ?」
「いつもこうなの。詳しく話してくることもないし、今日の呑みだって誰と行くのか…」

言わんとしていることは理解出来た。
浮気メールの相手を疑っているのだろう。
確かに連日の外泊、予告なくいきなり帰宅、自分に対する冷たい態度など、疑う要素はとても溢れていた。

「まぁ深く考えると落ち込むし楽しく食べよ?」
「…そうだね。あーもー何であんな人と結婚しちゃったんだろう。」

子供達はワイワイと食事を楽しみ、私達大人はそれを眺めながらテーブル下でぶつかった脚に気持ちを重ねていた。

重なる想い

嫌な予感というのは当たるものだ。
今日は物凄く夢見が悪かった。
泣いている彼女が助けを求めるという内容の夢に、物凄い不安感を覚えていたのだ。
とにかく目を覚まそうとシャワーを浴びに立ち上がったその時だった。
休日だというのに朝からLINEの通知音が聞こえた。
普段なら見向きもせずにシャワーへと向かう私なのだが、この時は夢からの不安もありLINEを確認した。

-朝からごめん…今日会いたいんだけど…忙しい?-

彼女から会いたいと言われるのは初めてのことだった。
子供達が勝手に約束をして遊びに出ることはあっても、個人的に会いたいなんて余程のことだと思いすぐさま返信した。

-おはよ。大丈夫、子供達の準備したら向かうよ。-

シャワーを浴び、子供達の食事を済ませ私達は彼女の家へと向かった。
家に着くと、子供達がドアを開け元気に挨拶をして中へ入って行った。
私もその後に続き家に入ると、綺麗に着飾った彼女が出迎えてくれた。

「おはよ。」
「おはよう。どうしたの?」

何だか妙に明るい表情をしていた。
靴を脱ごうとしていた私に近付き、彼女は首に手を回し唇を重ねた。

「ん…どうしたの?」
「何でもないよ、こうしたかったの。」

こんな甘い感覚は久しぶりだった。
そして、久しぶりに彼女の明るい表情を見た気がする。
子供達は二階の部屋で既に騒いでいた。

「コーヒーでいい?」
「ありがとう。」

建築関係の仕事をしているという旦那の関係で、モデルハウスのような開放感のある家だったのだが、実際には使い勝手が良くなかった。
コンセントの数、室内の移動、エアコンの導入にも壁の中を長距離の配管が必要だという。
しかし、お洒落な家という雰囲気はあった。
彼女の入れてくれたコーヒーを飲みながら、私は二階の子供達のいる部屋に目をやった。

「あのさ…昨日もパパが帰って来なかったんだ。」
「仕事じゃなく?」
「ううん、仕事はあったはず。いつ仕事に行ってるのかも知らないんだよね。」
「フレックス?」

何でも、旦那の会社の場所も仕事形態も知らない上に、生活費として口座に旦那が入金した分しか給料も把握してないと言う。
そして、昨日から明日まで帰らないということしか連絡もなかったそうだ。

「こんなので家族って言えるのかな?」
「色々な家庭があるけど、秘密主義は疑っちゃうよね。」

寄り添ったつもりはなかった。
素直に自分なら疑うと思ったからそう答えたのだ。

「こんなDMが届いたの。」

[雲海が見えるホテル ご利用頂きありがとうございます]

「なにこれ?」
「私…こんなホテル行ったことないんだよね。」
「ん?連れてけってこと?」
「違うよ。パパが使ってるってこと。」
「何のために?」
「知らない…でもね、この前出張だって言って3日間留守にしたことがあるんだよね。」
「じゃあその時泊まったんだろ?」

彼女は黙って首を振った。
しばらくの沈黙の後、彼女が打ち明けてきた。

「また携帯見ちゃったの…」
「見ない方がいいよ?夫婦間でもプライバシーの侵害で騒ぐ時代なんだから。」
「うん…でもね、その出張って日の前にまた女と連絡してたの…」

なるほど、それで朝から会いたいなんて連絡が来たのか。

猜疑心

旅行で使ったこともないホテルからのDMで、彼女の不安は現実なものなのだという実感が湧いたと言う。

「前に言ってたよね?」
「何を?」
「離婚は難しくないって…」
「ああ、紙一枚の関係だしね。離婚だって紙一枚だよ。」
「でも、子供に傷が残らない?」
「それは場合によるんじゃない?」

この時初めて私が離婚した経緯を事細かに教えたのだが、彼女はそれを聞いて涙を流した。

「うちは子供に対しても優しくはないけど…違う、自分のことしか考えてないパパだから関心がないのかな。」
「離婚するのかどうかは自分で決めるしかないけど、何が子供にとって1番かと聞かれれば両親がちゃんと仲良く笑顔で自分を見ていてくれる環境なんだと思うよ。」
「…そんな環境ではないよね。
今だってどこで何してるのか…」

女がいると確信しているこの状況で、連日の外泊や呑み歩いている旦那に対して疑う気持ちを持つなと言うのは酷なことだろう。
だが、私が何か言う筋合いではない。

「…離婚届って役所にしか置いてないのかな。」
「欲しいの?」
「用意はしておいた方が良いのかも…」
「出張所とかにも置いてあるよ。」

彼女の親が商工会に勤めていたこともあり、あまり役所などに顔を出して紙を取りに行くのは気が引けると言う。

「じゃあ、紙だけは取ってきてあげるよ。
使うかどうかは自分で決めなきゃだけど、夫婦で話し合うキッカケにも使えるだろうし。」
「本当?…もし別れたら行ってもいい?」

私は自分の気持ちを表に出さないようにしていたが、きっと顔に出てしまっていただろう。

「それは構わないよ。女の場合は離婚後に期間を置かないと再婚できないけど、その後なら籍入れたって構わないし。」

彼女の表情に赤みがさした。
空になった私のカップを取り、コーヒーのお代わりを入れに席を立った。

「ママー、公園に遊びに行きたいよ‼︎」

彼女の娘がそう叫び、私は淹れたてのコーヒーを一気に飲み干した。

「じゃあ遊びに行こうか。車に乗りな。」

二階から駆け下りてきた3人は、一斉に表に飛び出した。
部屋に残された私達は、強く抱き締めあい舌を絡め合ってから家を出た。
公園までの車内、子供達は3列目のシートではしゃぎあい、私達はフロントシートで手を繋いでいたのだった…

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