ショートショート 特殊相対性理論

 詳しいことは正直、わからない。が、かのアインシュタインが提唱した特殊相対性理論はつまるところ

「時間の流れは一定ではない」

 ということだとは聞いている。彼が言った喩えで

「例えば君は綺麗な女性と、そうでもない女性、それぞれと一緒にいた時、どちらの時間をより短いと感じるかい?」

 という内容のものがある。21世紀になり、ポリティカル・コレクトネスが声高らかに謳われている時代、この言い方はいかがなものか?とは思う。が、まあ、女性に

「イケメンと、ブサメン、それぞれと一緒にいた時、どちらの時間をより短いと感じるかい?」

 とたずねた、と置き換えると一応、感覚としては通じるだろう。そもそも、今の時代、権力を持った男が、男目線な物言いを公の場ですると、世論や批判の縦断爆撃を受け、ネットにSNSという名の籍を置いていたら、そこがもう

「汚物は、消毒よ」

 と、アンチという名の火炎放射器の焔を世界中から受けて、大炎上のnoのち社会的に、荼毘に付されかねない。

 これが、女性の発言ならそこまでない、事もないかも知れないが…まあ、そこまで事を荒立てることはないか。

 いや今、話をそこまで膨らませるつもりは毛頭、ない。
 要は
「時間はその人の感じ方によって、ほんの数秒ですら、とてつもなく永く感じてしまう」
ということだ。たとえそれが5秒であっても、自分に必要のない時間は永遠にも感じられる、ということなのだ。
 そして、俺は今まさにその、刹那の時間が永遠に感じられる渦中にいた。

 画面にカウントダウンの文字が浮かんだ。

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

 よし、次だ。次のコマンドで、俺は報われる…俺はその「コマンド」が画面に表示されると同時に、ボタンに手をかけ、押した。











「広告をスキップ」

 よし、これで、見たかったYouTubeの続きが、見れる…。はずだった…。しかし、そこにはさらに非情なインフォメーションが。

「広告終了まであと6秒」

 全く興味のない企業案件であるネットコマーシャル。無味無臭で刺激のない時間…。永い、永遠とも思える永い6秒…やっと、終わった。

「よ、よし!…はあ?」

 更なる、悪夢が…。

「動画は広告の後に再生されます」


 アインシュタインは、21世紀の人類のこんな苦悩の法則性を、半世紀以上も前に提唱していたのだ。


追記
このネタを書こうとして、改めて何らかのYoutube動画を見たんですよ。
広告が入る際にでる「文字」が見たくて、ですが。
そしたら、そういう時に限って、コマーシャルが入らず、思わず時間がかかったという…。
無情な運命を感じた次第です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?