野に、咲く。13

野に、咲く。 第十三話

「血風、吹き荒ぶ」その2

人を殴るとどうなるかわかりますか?

顔面を殴ると唇は切れて出血し、歯は簡単に折れます。

顎の下はカスっただけで脳が揺れて気絶したり、鼻を殴れば血が吹き出してきます。

僕の姉は躊躇なく僕を殴りました。

とにかく喧嘩になると、しこたま殴られたのですが、もはや姉が強いのではなく僕が喧嘩

が弱いのに、仕掛けたのが悪かった。どこかで親の愛情を充分に受けている姉に嫉妬していたのだ。


ある日、姉に殺されかけた‥

5歳の頃に僕が育った島は砂利に特徴があって丸くなく長方形の砂利でザクザクしている。

灯台がある崖の近くで姉と砂利を投げて遊んでいた時のこと、父と母は離れた場所に

いて、遠くに確認できたのを覚えている。 

灯台の下あたりの展望台があり柵を超えて遊んでいた時

僕は後ろから背中を押された‥  姉は、僕を強く押した。

砂利に滑り、45度くらいの角度の崖をゴロゴロ転がりながら崖下に落ちていく。

下まで落ちたところで気を失っていたのだろう、気づくと暗くなっていて

誰もいなかった。ゆっくりと身体中が痛くなってきて、深い傷は後頭部、

頭は濡れていると思ったら血でべっとり、指2本は脱臼、身体中擦り傷だらけで

膝と肩は衣服も破れて、くつは転がり落ちる時にどこかへ飛んで行ってしまったらしく

履いていなかった。




暗闇を何時間歩いたのか覚えていない、とにかくひたすら歩いた。

止血や処置など、しようとも思わず、ただ姉に怒りと、父母の理不尽さに

子供ながらに ”笑っていた”    朝方、父母姉が住むアパートに着いた僕は

ドアのガラスを石で割り、玄関から家に汚れた体でズカズカ上がり

言葉にならない怒りを叫んだ。  そのあとは覚えていないが、何年かして

母にその時のことを聞いた。 「あんたはおらんようになったと思ったら朝方に血まみれで家に入ってきた」

姉はふざけ半分で押してしまい怖くなり、弟は寺に帰ったと父母には言ったそうです。

なので捜索もしないまま帰ったのだと。


つづく










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