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青嶋未来六段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

順位戦もC2最終戦を残すのみとなり各クラスの昇降級が決まっていく時期になりました。実力を認められていた若手が着実に昇級する一方で、私にとってはトップ棋士のイメージが強い先生方が降級していく現状。自然の流れとはいえ複雑な気分にさせられてしまいます。大好きな山崎八段も、もう若くはない。あと一花、いや二花、欲を言えば毎年満開を期待しているのですが糸谷八段までが落ちてくる順位戦、年々厳しさが増していきます。

山崎八段を諦めない話は置いといて、C1ですが青嶋未来六段が昇級を決めました。当たり前だという気持ちとようやくですかという気持ち、それでいて最近はノーマークになっていた気もしていて、このクラスで過ごされた7年という年月があまりに長かったことを痛感してしまいます。
私が将棋を観始めた頃は、まだAMEBAの放送がなかったので専らニコニコ動画を観ていました。その中には将棋ウォーズ企画の番組が沢山あり、パオロンというアカウント名の謎の強豪が猛威を奮っていました。そのパオロンが当時奨励会員の青嶋六段だった訳なのですが、強いのなんのってメチャクチャに強かったです。その上、オールラウンダー。どんな戦型でも指しこなしては短い時間で破格に強い。正体が判らないという魅力が更に強さを引き立たせるものですから、対局にエントリーして現れることを視聴者は待ち焦がれて登場するや否やコメントの弾幕で大盛り上がりでした。「パオロン」という名の由来はよく知りませんが「ロン」が「龍」を彷彿させるので暴れ狂う正体不明の龍人に龍神の如き強さを感じたものです。しかも、それだけの興味を引いておいて正体が判明した後でも期待が損なわれなかったのが青嶋六段の人物像。プロ入り前からあの強さ、若くて繊細で名前が未来みらい。プロでの活躍を期待しましたねぇー。凄い神童が降りて来たかのように感じました。実際にプロ入り最初はクラスを一期で抜けてしまいましたし、期待ではなく確信だった気がします。今でいう伊藤匠五段に抱く印象に近い。藤井五冠すら登場する前の話なので、それこそ将棋界を席巻する次なる寵児のようすら見えた。オーバーな物言いに取られるかもしれませんが「パオロン」にはそれほどまでの名の響きと圧倒的な強さという強烈なインパクトが私にはありました。

そんな記憶があるからか動画として上がっていた昇級インタビューには見入ってしまいました。20分を超える対局直後としては少し長めにも感じるインタビュー。ホッとしている様子と苦しかった今までを噛み締めているように見えた。「このまま取り残されるような焦りがありました。」「このチャンスを逃すと次またいつあるか分からないので必死で掴みに行きました。」30歳が見えてきたリアルな棋士の本音の吐露ばかりがこぼれ落ちる。これがあのパオロンの現実なのだろうか…

チェスに採点カラオケ、趣味の分野でも余りある才能を発揮する青嶋六段。豊かな才能ゆえに他事への好奇が抑えられないのかもしれません。一途ばかりが良いとは言いませんが一途でなければ厳しい世界。青嶋六段のように多才な人には好奇を抑えるという別の苦しみとも戦わなければならない厳し過ぎる世界なのかもしれません。

だからもうパオロンに抱いた幻想はいいです。あれは幻、儚き期待でした。でも青嶋未来の未来にはまだまだ期待したい。今回の昇級がきっかけとなって将棋界で益々上り詰めてくれてもいいし、趣味の世界で脚光を浴びて将棋と並行しての活躍だって出来る。最近はメガネを外して大人の雰囲気でスマートなイメージに一新してきた青嶋六段。未来はやっぱり光り輝いている。

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