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金井恒太六段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

山崎八段と言えば、初代叡王。
タイトル棋戦扱いではない初回のため、念願のタイトルホルダーとはならず
残念無念。タイトル棋戦昇格の2年後に颯爽と獲得したのが高見泰地七段。そのタイトルを争った番勝負の相手が金井恒太六段でした。

流れを掴めなかったか、4-0という一方的なスコアでの敗戦となってしまった決定局の打ち上げで、高見七段を直接祝福したという敗者の金井六段。
対局終わればノーサイドですが、良くも悪くも人柄の良さが際立つ出来事。
勝負師としては懸念、とはいえ人としては満点。品が良過ぎるのです。

当初は失礼ながら、ウィーン生まれでピアノも弾ける、格調高い郷田先生
信者くらいにしか存じていませんでした。
でも最近、私は解説者の欄に金井六段の名前を見つけるとテンションが上がってしまいます。あと井出隼平五段の名前も。

少し高めの通る声で、丁寧かつきれいな言葉使い。
文字数多めの口調ながら、その流暢さから聞き取りやすい。
大盤操作も同様に、丁寧かつきれい。
軽やかな前後ステップで、流れるような駒運び。
横着せず一手一手ちゃんと動かす駒に、観る者への配慮を感じます。

とにかく、観やすいに尽きる。
女流棋士には紳士的だし、先輩棋士と組めば礼儀正しい。
後輩棋士相手でも謙虚なままで、相手を立てるのが基本姿勢。

でも、最大の魅力は、得も言われない言葉遊びです。
絶対、観る者を笑わそうとしてます、金井六段は。私にはそう感じます。
解りやすく笑わそうとはしてきません。解りにくく、むしろ解らない程度におかしなことを言ってくる。真顔は崩さず、テンポも変えず、丁寧口調で。

「飛車交換になると大盤を動かすだけなのに緊張してきます。」
「自分自身の読み筋で技が決まると嬉しいんだか悲しいんだか…」
「双方怖い局面なら自分から行くかと、その判断が怖いということも…」

聞き手からの違う指し手の解説を求められても
「攻めてばかりの私に、ここではちゃんと守れということですね…」
「解って進めてはみましたが、当然、そういうご指摘が来ますよね…」
「目先の実利に目がくらんで取っているようではダメだと、なるほど」

面白いかどうかは観る者に委ねて、笑うようには仕向けない。
でも、言い回しや表現で遊んで、たぶん少しだけふざけている。
品良い姿勢で誤魔化しつつも、絶妙におふざけをまぶしてくる。

「敬愛(桂合)の気持ちで止めてみたら、実は大丈夫ということがあれば
よいのですが…」
桂馬の合い駒しながらの解説で、まさかのダジャレ。
こんな踏込みの強いおふざけだって、時にはやってのける。
聞き手は気づかないままで、本人も何事もなかったかのように解説を進めていましたが、やってることは豊川先生と同じで、自己完結というやり口まで一緒。本当に信奉しているのは、郷田先生ではないのかもしれない…

終始こんな感じで、真摯に解説をしながらも、ずっと言葉遊びのお戯れ。
品のいい冗談なのか、ウィーンジョークかはわかりませんが、そんな金井
六段のお戯れ解説が、私は本当に大好き。

「次は、出演者を交代してお送りします。」
聞き手が金井六段の隣で言う。少しがっかりしたCM明けに、再び金井六段が立っている時のあの嬉しさ。聞き手が飯野女流に交代してるとなお嬉し。
連続金井にプラス飯野、一門絵面にお風呂のタイミングを見失います。

対局でのご活躍も期待するのですが、対局中の金井六段は、当然喋らない。
叡王戦のようなご躍進を心よりお祈りするのですが、解説の仕事が減らない程度の勝ち星で、何卒お願いしたいものです。

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