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三浦弘行九段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

ずっと後回しにしてました、三浦弘行九段のことを書くこと。書くなら冤罪事件について触れたい。でも今更あの事件に触れるのは良くない気がする。ただ私は将棋が好きなので、今、将棋を純粋な気持ちで楽しめているのは三浦九段のおかげだと思っています。三浦先生には感謝していますし、事件を通して先生を尊敬をしています。その気持ちのまま書きたいと思います。

あの事件が起きた当時、私は起こるべきして起きてしまったと思っていました。ただ起きるのであれば奨励会の対局ではと懸念しており、大事な対局で三浦九段が起こしたと聞いた時には衝撃を受けました。同時に「三浦九段かあ…」と妙に受け入れてしまったのが当時の私です。誰かが起こすのであれば三浦九段のようにストイックで真面目と言われる人ほど、こういう闇に陥ってしまいそうだと変に納得してしまったんですよね。本当に失礼な話で今でも申し訳なく思います。あと当時、三浦九段を疑ったと非難された棋士の先生方に対しても私は仕方がなかったという感想を持っています。棋士以上の強い存在がおらずカンニング不可能な競技として歩んできた将棋が、急にカンニングが出来るかもしれない状況になってしまった。性善説に期待して対局環境も変わらぬままで、整える議論すらしづらい空気感があったのかもしれません。それでいてソフトによる研究が急激に増え始め、対局中にも見たことのない手が数多く出始めていました。いくら棋士の矜持があると言ってもそれは自身の矜持までで相手のそれまでは信用しきれない。疑心暗鬼になって目に入る全ての行動が怪しく見えたとしても仕方がないと思いました。そして将棋界の今後を考える棋士ほど見過ごすことのできない問題となって、責任感を持てば持つほど何とかしなければいけないと解決策を探っていた時期だったのだと思います。結果として無実の三浦九段を疑い冤罪を生んでしまうことになったのですが、私には当時も今も悪意からの冤罪とは思えず、非難する気持ちにはどうしてもなれないのです。

あの事件に悪者はいなかった。
それが私の感想ですが三浦九段が大いに損害を被ったことは事実です。それこそ想像を絶する心労の謹慎期間だったことと思います。そして復帰後にどれだけ三浦九段が復活できるか、どのような態度で事後の将棋界に携わってくれるかが、将棋界のその後の明暗に関わってくる一番の鍵だと思っていました。あの時ズルズルと三浦九段の成績が落ちてしまったり、イベントや解説で腫物のような存在となっていたら、将棋界は冤罪で大きな被害者を出したイメージをずっと抱えていくことになっていたと思います。

今の将棋ブームは、もちろん藤井五冠というスーパースターが現れ、その活躍によるものだと私も思います。しかしながら、その土台として暗闇に落ちそうになっていた将棋界を救った英雄、三浦九段の復活と貢献があってこそ生まれたブームだと私は感謝しています。復帰直後、少しの低迷こそありましたがすぐに復調しては本来の実力を見せてくれた三浦九段。アベマトーナメント等の企画にも積極的に参加して、いつも通りの笑顔で「みうみう節」を聞かせてくれた三浦九段。何事も無かったかのように将棋界が発展しているのは、何事も無かったかのように三浦九段が強いままで、何事もなかったかのように以前と変わらぬ「みうみう」のままで将棋界の普及に参加してくれているからだと私は思うのです。

三浦九段を見ていると本当に頭が下がります。あんな大事件に巻き込まれて生涯をかけてきた将棋を奪われかねない恐怖を味わった人が、あんなにも変わらないままで戻ってこれるものなのでしょうか。卑屈にもならず横柄にもならない。将棋に向き合う姿勢も将棋界に携わる人柄も以前のまま。三浦九段はただ将棋が好きなだけなんでしょうね、だから何も変わらない。真面目で強くて、少し不器用な感じの人柄が「みうみう」と気さくに呼ばせて愛されている。

願わくば、もう一度竜王戦の挑戦者まで勝ち上がってほしい。
表舞台のスーパースターに土台を守った英雄が挑むタイトル戦で、忘れ物を取り戻してもらいたい。もしその時にスーパースターが八冠だったりしたら、七冠棋聖と八冠竜王を撃破した歴史的英雄になるんですけどね。

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