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渡辺和史五段【将棋のこと】

私は将棋を観るのが好きだ。
そして山崎八段ファンです。

毎週土曜は師弟トーナメントを楽しんでいますが、師匠の熱い思いに肩入れし応援していた豊川チームが負けてしまいました。豊川先生の良さは随所に堪能しましたが、勝負だけをとれば厳しい戦いだったのかもしれません。どのチームも弟子側は指し盛り。そういった弟子を相手に未だ対等に戦える師匠の居るチームでないと勝ち残るには厳しい大会なのだと勝ち残りの顔ぶれを見て思います。それでも時に一発を入れたり、終始駒音を響かせてはうめき声を漏らして奮戦する豊川先生には十二分に楽しませていただきました。

話は変わって、解説の村中秀史七段が語っていましたが師弟の口調って似てくるものだなとこの番組を観ていて思います。村中七段が例に挙げていたのは木村・高野師弟でしたが、他の師弟も割と似ていると私は思いました。すごく似ているとまでは言えないけれど何かしらの共通するものを感じる。深浦・佐々木師弟、畠山・斎藤師弟、なんだったら藤井五冠ですら杉本八段と共通する何かを感じます。私としては口調の中でも抑揚とか音量、速度あたりが似てくるのではと感じるのですが、私個人の願望含みの思い込みかもしれませんね。私自身が時よりハッとするほどに父に似た響きを自覚することがあるので、幼き頃から見てきた背中の影響は受けるものであり受けていて欲しいと感傷的に観ているせいだからかもしれません。

そんな中、失礼ながら全くもって似てないですよねと言えてしまうのが豊川・渡辺師弟。渡辺和史五段でなくとも個性溢れる豊川先生に似ることは不可能な気がしますがあまりにも正反対。それでいて波長は合っているようなので師弟とは本当に奥深いものです。再び失礼になるのですが、前回のアベマトーナメントまで渡辺五段のことはあまり知りませんでした。やたらと連勝している若手がいると思っていたらそこまで若くもないらしい。どうやら奨励会で苦労したタイプの実力者なのかと、その程度の知識でした。渡辺名人に指名されて、名人・近藤七段という恒例の兄弟弟子コンビに加わった渡辺五段。そのコンビが強固かつ強豪なだけに大丈夫だろうかと観ていましたが、動じることもなく堂々とすらみえるほどのマイペースぶり。控室でどれだけ名人からダメ出しを喰らおうとも時間を惜しみなく使っては粘りに粘ってそれなりの結果を残しました。ドラフトの醍醐味とも言えますが、同業者だからこそ知る強者を渡辺名人が表舞台に引っ張り出して、それに見合う働きを盤上で魅せた渡辺五段。その成果が師弟トーナメントにまで繋がって鬼の連勝で師匠を望外の本戦まで連れて行くに至りました。控えめな姿勢とは裏腹に掴んだチャンスはしっかりとものにして見せた。チーム戦を通じて師匠を脱帽させた今の実力は本物でこれからの活躍を益々に期待したいです。

渡辺五段といえば一点、個人的に妙に気に入っている姿があります。ガッツポーズです。作戦会議の最後、対局場に向かう直前にやるあのガッツポーズなのですがやや独特。右肘を少し上げて拳は固く握る、手の甲をカメラに向けて裏拳を押し付けるかのように高く掲げるガッツポーズ。名人チームとして出ている時からずっと気になっていました。大人しそうな風貌なのに出場棋士の中でもひときわに力強いガッツポーズ。静かに闘志を燃やすタイプかと思いきやマスクでは隠せぬ眼鏡越しに光る目力もなかなかのもの。やっぱり師弟とはどうしても似てくる部分があるのだと信じさせてくれるあの姿こそ、私の一番のお気に入りです。

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