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住み込みバイトを脱走した時の話vol.2

その日はカラッとよく晴れていた。夏の北海道の空気は湿度も低く心地よかった。

札幌からその僻地へはバスで2時間以上。友達からもらったおにぎりはもう無くなっていた。

カメラマンとの待ち合わせ場所で待つこと10分ほど、オンボロの軽自動車で彼は現れた。

現れたけれど…
会って即「なんかヤバい」と感じる人ってそんなに居ないんじゃないだろうか。彼はそのヤバい人だった。

まずヤバいと感じたのは、その出立ちだった。
服装は白いTシャツにデニムだったのだが、そのTシャツは何千回洗えばそこまで薄くなれるのかと言うほどに着古されたもので、シースルー化してガチで乳首が透けて見えていた。
そして実験に失敗した博士と言う表現がピッタリの爆発した髪型と、曇った眼鏡が不衛生さを醸し出していた。

え?え?マジで?この人と1ヶ月ひとつ屋根の下で過ごすの?

と、一瞬ひるんだものの、ここまで来て引き返すわけにも行かず、私は彼のギャラリーへと運ばれて行った。

つづく。

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