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〈とある魔術の禁書目録〉インデックスが10万3000冊の魔導書を記憶しても平気なのはなんでなの~???

 皆様初めまして。
 好きな吸血殺しは姫神秋沙、狐ノマドです。


 皆様は「とある魔術の禁書目録」という作品をご存知でしょうか。

とある魔術の禁書目録」のあらすじ
超能力が科学によって解明された世界。能力開発を時間割り(カリキュラム)に組み込む巨大な学園都市。その街に住む高校生・上条当麻のもとに、純白のシスターが現れた。彼女は禁書目録(インデックス)と名乗り、魔術師に追われていると語る。こうして上条当麻は、科学と魔術の交差する世界へと足を踏み入れていく。
フリー百科事典「Wikipedia」より抜粋


 わたくしこと狐ノマド、令和のこの時代になって、ようやく「とある魔術の禁書目録」第一期を視聴完了するにいたりました。

 はちゃめちゃに面白かった。

 色褪せない名作、素晴らしい。

とある魔術の禁書目録第1巻、インデックスがかわいい。


 そんななかで、原作の第一巻、インデックスが持つ「完全記憶能力」によって10万3000冊の魔導書を記憶させられた彼女は、イギリス正教の魔術師であるステイル=マグヌスと神裂火織によって、一年ごとに記憶を消さなければ脳がパンクして死んでしまうと、正教から追われる身となっていました。

 記憶消去の儀式の日、消去まで猶予をもらった主人公の上条当麻くんは、なんとか記憶を消さずに済む方法はないかと画策し、自身の担任で心理学の専門家でもある月詠小萌先生に助力を請います。
 小萌先生は10万3000冊の魔導書を記憶することについて次のようにいっていました。

『よいですか上条ちゃん、そもそも人の「記憶」とは一つだけではありません。言葉や知識を司る「意味記憶」、運動の慣れなんかを司る「手続記憶」、そして思い出を司る「エピソード記憶」ってな具合にですね〜、色々あるのですよ〜、いろいろ〜』

〜中略〜

『それぞれの記憶は、容れ物が違うんです〜。燃えるゴミと燃えないゴミ、みたいな?例えば頭をがつーんと打って記憶喪失になったって、はぶばぶ言ってそこら辺をハイハイする訳じゃないでしょう〜?』

〜中略〜

『どれだけ図書館の本を覚えて「意味記憶」を増やした所で〜、思い出を司る「エピソード記憶」が圧迫されるなんて事は、脳医学上絶対にありえません〜』
「とある魔術の禁書目録」第一巻pp.253-254から引用

 これを聞いた私はこう思いました。


ホンマか?

 さすがに10万3000冊も本を覚えてたら頭がパンクしたり廃人になったりするんちゃうか?????
 だって漫画とかで理解できないほどの情報量で「ミ゛」って、なるのみたことあるし!少なからず私生活に影響が出るくらいはあるんちゃうんか〜〜〜?????と。

 餅は餅屋、蛇の道は蛇、専門家に聞いてみようと思いましたが、友達の少ない私には悲しいことにそんな知り合いはいません。


だったら、だったらよ








まずはそのふざけた幻想をぶち殺す








私が専門家だ。(流れ出すDriving With The Top Down)

俺の最弱はちっとばっか響くぞ


記憶とは

 記憶は『記銘』『保持』『想起』の3つの過程を踏んで行われます。

 『記銘』は情報を入力し符号化すること、『保持』は入力した情報を保つこと、『想起』は保った情報を引き出して思い出すことを意味します。

 記憶はさらに短期記憶長期記憶に分けられます。
 短期記憶は数秒から数分だけ維持されます。その記憶を繰り返し唱えること(リハーサルと呼ばれる)で長期記憶として定着します。
 長期記憶は永久的に保たれるといわれますが、思い出さずにいると忘れて行ってしまいます。

 復習、大事。

 そして長期記憶ははさらに次のように分けることができます。


言葉で説明しやすい陳述記憶

  • エピソード記憶:「昨日の夕飯はハンバーグだった」などの過去に自分が経験した出来事についての記憶

  • 自伝的記憶:「小学生の時に事故にあった」など自分自身にとって関係の深い出来事についての記憶

  • 意味記憶:「日本一高い山は富士山である」といった物事の意味や概念などの知識としての記憶。

言葉で説明できない非陳述記憶

  • 手続き記憶:自転車の運転など、身体で覚えた記憶


 これでいうと文字や文章は意味記憶になるので、10万3000冊の魔導書は「意味記憶」ということになるのでしょうか。




合ってるな

 はい、小萌先生合ってます。
 長々と解説しましたが小萌先生の説明があっているという裏付けにしかなりませんでした。悔しい。

 ただ、これが脳がパンクすることがないことの説明になっているかは微妙ですよね。

よね。

 そこで、今度は「領域」に目を向けて、10万3000冊の魔導書の記憶について考えていきたいと思います。



脳の「領域」とは

 人間の脳は、言葉を話したり記憶をすることを司る大脳、筋肉の動きを記憶し調整する小脳、呼吸などの生命維持にかかわる脳幹に分かれ、さらに大脳は表面の大脳新皮質(思考、言語など心の動きにかかわる)と、内部の大脳辺縁系(食欲などの本能)に分かれています。

 脳の箇所によって司るものが違うということは、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害や、交通事故・転倒などの外傷による脳損傷により起きる高次脳機能障害などで、障害を受けた部位によって症状が異なってくるということです。

 例えば大脳を損傷すると、損傷を受けた脳の反対側の片麻痺や感覚障害が引き起こされます。小脳では運動失調、脳幹では言語障害や嚥下(食物の飲み込みのこと)障害が引き起こされ、大脳皮質では失語(思うように話せない)や失認(対象を認知できない)、失行(行為を行えなくなる)などが起こります。


 それでは失語症を例に、脳の領域の損傷個所による症状の違いについて、少し詳しく説明します。

 失語症とは、大脳の言語をつかさどる部分が損傷されたために起こる言葉の障害を言い、特に大脳新皮質の二つの中枢については、障害される部位によって『感覚性失語』と『運動性失語』と呼ばれています。

・『感覚性失語』:言葉の意味を理解する「ウェルニッケ中枢」に障害を受けることで、自分は話すことができるが他人の話すことは理解できない症状がみられる。

・『運動性失語』:話したり書いたりするのに必要な筋肉の運動を支配する「ブローカ中枢」に障害を受けることで、他人の話すことは理解できるが自分の思いを言葉で表現できない症状がみられる。

 つまり、損傷を受ける部分によって同じ「話すことができない」という症状の内容に違いが生まれ、対応の仕方を変えていく必要が出てくるということです。

 脳にはそれぞれ記憶や運動を司る領域があり、損傷を受ける箇所によって引き起こされる症状が異なること理解していただけたかと思います。


学術書かこれ


 すみません。
 滾々と語りましたが、要は頭をがつーんと打って記憶喪失になっても、箇所によってその内容は違ってくるということです。

 また小萌先生に先を越されました。泣きたくなりますね。



まとめ

 記憶とは何か、脳の領域とは何かという視点でインデックスの10万3000冊の完全記憶能力について考察しました。

 記憶には「意味記憶」や「エピソード記憶」など、種類によって分けられること、脳にはそれぞれの「領域」によって司る記憶が異なること、障害を受ける部分によって症状に違いが出ることを説明してきました。

 結論として、小萌先生が上条ちゃんに説明したように、10万3000冊の魔導書を記憶したとしても、一年で記憶を消さなければならないという事態には陥らないだろうということを解説できたかと思います。

 初見で観たことによる熱量と、私自身の分野が被ったうれしさでだらだらと書いてしまいましたが、物語的には小萌先生が話した内容で要点は抑えられているといえるでしょう。

 小萌先生から解説を受けた上条ちゃんが取る行動とは!インデックスを待ち受ける運命とは!イギリス正教とは何なのか!

 みんなも「とある魔術の禁書目録」を読んで科学と魔術を交差させよう!




あぁ~

私も小萌先生に研究発表会とかで

「素人質問で恐縮ですが~」とか

「この論文の著者は私ですが~」とか

「話長すぎ」とか

言われてぇ~なぁ~


言われてぇ~な~




主な引用・参考文献
鎌池和馬(2004)『とある魔術の禁書目録』電撃文庫柳田理科雄(2022)『空想科学読本Ⅰ』KADOKAWA
渋谷昌三(2017)『決定版面白いほどよくわかる!心理学』西東社
TAC社会福祉士受験対策研究会(2021) 『2022年版みんなが欲しかった!社会福祉士の教科書共通科目編』TAC株式会社
飯塚慶子(2021)『社会福祉士の合格教科書2022』株式会社テコム

ほか

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