+ あの空遠く +

幼い、恋にも満たないあたしの胸の淡い痛みと揺らぎは、
見上げた高い空を風に煽られて緩やかに流れて消えてゆく雲の切れ端のように思えた。
校舎に面した小山と、二階建ての校舎に切り取られた小さな空があの頃のあたしの見上げていた空だった。

刻を経て見上げる空は高く広く、眼に沁みて眼球を蒼一色に染められていくような空だ。

その空に重ねて想いを描くような恋を、それ以来あたしはしていない。

風が渡り雲が往く
碧く、そして蒼いあの空遠く