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突発性難聴が、鍼と漢方で良くなった話。

子供を妊娠する前、突発性難聴にかかった。

色々あってステロイドの点滴もしてもらえず、治療が大幅に遅れてしまった。

ずっと片耳だけ、低音が聞こえない。
音楽もキーン、キーンと高い音は聞き取れるのだが低音が入ってこないので、
とにかくストレスだった。

よく聞いていた作業BGMのジブリのボサノバも、
おかしな具合で音が響く。

ピーン、ピーン、ボーン…のような。

絶望感がすごかったことを覚えている。

ネットで同じような人を探して回ったが、
諦めている人の方が多かった。
中には音楽家でありながらこの病気に罹ってしまった人も。

気づけば、そうなってから2ヶ月が経とうとしていた。
3ヶ月を過ぎるとほぼ改善はしないというネットの情報も私を追い詰めた。

その間にいくつか耳鼻科にかかったものの、
どこも明るい見通しは立ててくれなかった。

処方されたイソバイドが合わず盛大に吐き、鍼灸師の父は
トイレに突っ伏していた私を心配のあまり蹴り飛ばした。

しかしその父は、毎日私のために耳の血流をよくする鍼を打ち続けてくれたのだ。
半信半疑だったが、母からの『お父さんを信じなさい』の一言が頼もしかった。

その結果、なんと聴力スコアがかなり戻った。
実感はなかったが数字は明らかだった。
父はとても嬉しそうだった。私も一筋の光明が見えた気がした。

しかし、その後再び聴力が低下したのだ。

このとき既に実家から他県に移っていた私は、地元でとても評判のいい耳鼻科にかかった。

ここではっきりと、メニエール病の診断が下ったのだ。

院長であるK先生がとても素晴らしい先生で、医院はいつも満員だ。
丁寧に一人一人に言葉をかけ、一生懸命に患者に寄り添う姿勢。
今までどこにもここまでの耳鼻科はなかった。

10年近く悩まされてきた、毎日のように襲う原因不明の乗り物酔いに似た吐き気はめまいの一種だと教えてもらった。

この発作のせいで幾つの仕事がダメになったか知れない。
メニエール病だと説明できたらどんなにわかってもらえたか。少なくとも罪悪感で余計なストレスを抱え込むことは減ったはずだ。
メニエール病だと見抜いてくれたK先生には感謝しかない。

私の場合、ある日突然片耳が聞こえにくくなった後、ひどい回転めまいの後に耳が片方ほとんど聞こえなくなったので、
突発性難聴だと思っていたし、

まだ原因や関係性も明らかでない以上
メニエールと突発性難聴は全く違う病気とも言い切れない部分があるのではと思う。

メニエールや突発性難聴をカミングアウトしている芸能人の気質を考えても両者は似たような気質を持つ人が罹りやすいと感じる。

ともかくもメニエール病の診断をもらった私は、その時すでに妊娠3ヶ月を迎えており、薬はご法度だった。
耳が聞こえなくなってからは、もう5ヶ月が経とうとしていた。

その時、父の学生時代お世話になった漢方の権威であるN先生に何とか縋ろうと図々しくも思い至った私は、
先生に仔細を相談した後、香蘇散という薬と、苓桂朮甘湯という2つの漢方を提案され、先生に全幅の信頼を置く私は迷わずまじめに服用しはじめた。

そして服用しはじめて2週間ほど経ったある日のこと。

気がついたら耳は聴こえるようになっていた。

試しにイヤホンで音楽を聞いてみた。

ジブリのボサノバは、なんの違和感もなく左右の耳で聞き取ることができるようになっていた。

嬉しくてたまらなかった。
絶対に治る、と励まし続けてくれた主人の言葉が蘇った。

このN先生、本当にすごいのだ。
漢方がなかなか効かないといわれたり、よく効くプラシーボなどという医師までいる始末だが、
よく調べると漢方はそもそも一人一人に合わせたオーダーメイドの薬であり、西洋薬のようにはいかないようなのだ。

まずは証を見分け、患者の体の状態を正確に把握するという離れ業を獲得する必要がある。

もはや医師というより超能力者の域。
それこそ気の遠くなるような修行が必要な分野なのだ。

なので私はこの2つの漢方が効いたが、
一人一人違うので、西洋薬のようにみんな同じ薬とはいかないだろう。
なので、私の処方は少なくとも私に効いたものであり、
読んでくださっている方々には、私とは証が違うために効かない方も多くいらっしゃるだろう。
その人の体質に合うことが大事なのだ。

N先生の域になれば、それをひと目で見破ってしまう。
医師として、人として、本当に尊敬できる先生だ。

あれから無事出産し、とても元気な男の子が生まれてきた。

難聴が治らなかったら妊娠期間を最低の気分で過ごすことになったかもしれない。
こんなに驚くほどの安産ではなかったかもしれない。
子供の声を聴くことも大変だったかもしれない。

そう考えると、漢方とN先生無しでは今の生活は有り得ないのだ。

私のケースはほんの一例に過ぎないが、
漢方は証がはまれば劇的に効くと思う。

それを見極められる医師は本当に少ないかもしれないが、
それでも、少なくとも漢方を中心に処方する医師にあまりハズレはないように思う。

というのも、医療関係者から
医師はあまり西洋薬を使わず、医師本人は漢方を飲むと聞いたからだ。

目的にもよるが、西洋薬は人間の本来持ち合わせている力で良くするわけではない。

ただ細菌性の疾患や、西洋薬でしか叩けない病気はたくさんある。
漢方の方が何にでも優れているわけではないのだ。

しかし生業として医師をしていると西洋薬のデメリットも多く見えてくるのだろうか?
もし、そういう医師が自分の病気には漢方を多く使っているのだとしたら。単にズルイ。

私は医師ではないので、自分が飲んで良いと思っている薬を患者さんにも勧めるなら、それは良い医師なのではないか?という安易な意見だが、
どちらを選ぶかは、医師に色々な考えがあるとおり、患者にも色々な考えがあっていいと思うので、そこは皆様の判断にお任せしたい。


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