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短編集

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フィクション、ノンフィクションにかかわらず、書いた物語を更新。 不定期更新。
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#エッセイ

【風景小説】乗り過ごした駅にて

「まもなくドアが閉まります」 切符片手に階段を駆け上がる私にもたらされた結末は残念なことに電車の乗り過ごしであった。 私は閉まりかけの扉をいちべつし、すぐさま電光掲示板を確認する。 次の電車まで、あと15分。 私はそのまま視線を携帯の液晶に落とし、画面に表示されていた列車を一本後ろに変更した。 太陽に熱されショート寸前の頭をフル回転させ、予定到着時刻とそこから目的地までにかかる時間を計算する。 はじき出された答えは、あいにくにも間に合う"かもしれない"という曖昧も

降り注ぐ餅

君は、餅まきを知っているだろうか。 紅と白に染められた、大層めでたそうな餅を、二階ほどの高さの場所から主催者が放り投げる。地上に待機している参加者たちは、降り注ぐそれを空中で受け止めたり、取りこぼして地面に落ちたそれを拾ったり…… これがが餅まきである。 🎍 我が家の近所にある神社では、毎年一月の九日から十一日の三日間、商売繁盛を祈願する「えべっさん」と呼ばれる祭りが開かれる。 餅まきは、そのイベントの締めくくりとして行われ、祭りを大いに盛り上げていた。 🎍 私