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短編集

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フィクション、ノンフィクションにかかわらず、書いた物語を更新。 不定期更新。
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2020年7月の記事一覧

降り注ぐ餅

君は、餅まきを知っているだろうか。 紅と白に染められた、大層めでたそうな餅を、二階ほどの高さの場所から主催者が放り投げる。地上に待機している参加者たちは、降り注ぐそれを空中で受け止めたり、取りこぼして地面に落ちたそれを拾ったり…… これがが餅まきである。 🎍 我が家の近所にある神社では、毎年一月の九日から十一日の三日間、商売繁盛を祈願する「えべっさん」と呼ばれる祭りが開かれる。 餅まきは、そのイベントの締めくくりとして行われ、祭りを大いに盛り上げていた。 🎍 私

夢十夜『ある男の背中』

二畳ほどの見慣れた脱衣室。 私は洗面台の鏡に背を向け、しきりに映し出された背中の様子を見ている。 背には黒い楕円形があった。楕円は握り拳ほどの大きさをしており、その色は深く、土砂降りの雨に打たれた古い礼服を彷彿させた。 「なんなのだこれは」 私は訝しげにそれを見つめた。吸い込まれるような楕円だった。しばし見つめたのち、手を伸ばし、触れようとした。しかし、楕円は肩甲骨のちょうど真ん中に座しており、四十肩持ちのこの身体ではどうにもこうにも、届きそうになかった。どうしたものか