蔵出しブログ。西浦田楽 2013

ようやく西浦田楽について書きます。

午後九時過ぎから、観音堂境内の舞庭から眺める山あいから月が上り始めて始まります。
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地能が三十三番。はね能が十一番。しずめ。が四番で朝の日の出前まで行なわれる農祭りであり神事であります。旧暦一月十八日に毎年あり、今年は二月二十七日に行なわれました。
地能は、観音菩薩の奉納の舞や、悪霊祓の舞など神事芸能です。楽器は太鼓と笛、曲目によりササラも入ります。フレーズはやや単調の繰り返しです。
地がため。という曲目は長槍で地を突くように固めて悪霊祓退散の舞です。反閇という型もあります。
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高足という曲目は、ポッピングのような木型で舞庭の四隅を乗っていきます。
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地能のクライマックスは、御船渡し。で船のミニチュアに火を点けて綱で引っ張っていくものです。観音堂に火が燃え移らないか見ててヒヤヒヤしました。
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狂言の原点のような、ユーモラスなやりとりの、よなぞう。翁、三番叟もありましたが、かなりアッサリとしたものでした。地能で印象深いのは、佛の舞です。千手観音、勢至観音、聖観音、馬頭観音、子安観音、せんじ観音の六観音の行道です。
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背中がピリッとくるものを感じます。中世絵巻の中に迷いこんでしまった錯覚さえ覚えてしまいます。
地能が終わり、はね能へ移ります。
高砂、山姥、野々宮、など能の曲目と同様のものがあります。はね能が地能と違うのは、地能があくまでも舞が中心であったのに対し、はね能は、楽堂から、謡も挟みこまれる所ではないでしょうか。

続く

はね能からの続きです。神事のあとの後宴能の役割を果たします。はね能は、「高砂」「しんたい」「梅花」「観音の五方楽」「山姥」「しょうじょう」「くらま」「さおひめ」「ののみや」「やしま」「うる舞」「橋べんけい」という曲目。
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↑写真は山姥。
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ののみや。能の野宮とは違い、地方の女が前掛けをしたものです。先のブログにも書きましたが、地能と違いはね能は、楽堂から謡が挟まれます。
能の創成期もこんな感じだったのだろうなという楽しい想像をしながら魅入っていました。

はね能が終わると、番外として「獅子舞」「しずめ」
はらい。で「火のう」「水のう」がありすべてが終わります。

舞庭を箒で整えてござを敷きます。
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このあとの写真も撮りましたが、大事な神事です。公開は差し控えます。
獅子舞は、獅子がござに坐り、五つの場所を拝してまわります。
しずめ。この神事が自分が西浦田楽を観た中で心に残るものでした。
田楽祭りにいろんな神々を迎え奉りて、またこの神々を元の本郷に送り返す舞です。
別当が、しずめの面を持ちござに坐す。そして面をつけます。驚いたのは、能の翁の謡の(とうとうたらりや~)が楽堂の地で謡われます。詞章は微妙にちがいます。
翁の原点があるのかなと。しずめの面は、額に角が生えた鬼面でした。そしてまた面を取り戻っていきます。
神と鬼は表裏一体という考え方もあり、また、翁について考えさせられるものとなります。
はらい。は、火の王の面。水の王の面を坐して祓う儀式。
これですべてが終わりました。
別当の挨拶があり、
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午前八時前で、山あいから太陽が上る時刻です。

あらゆる芸能の原点が西浦田楽にはありました。
観る機会に恵まれて感謝しております。
一緒に観た方々には、資料の提供や、カイロを貰ったりして本当にお世話になりました。この場で、御礼申し上げます。

西浦田楽のブログで、最後の、番外である獅子舞、しずめ、はらい、は神事であり、写真も撮りましたが公開を控えていました。

自分が観ていてピリッと引き締まったからです。
でも、写真撮影が許されており能に興味がある人にはいつか生で観てもらいたくて遅ればせながら公開します。

はね能が終わり、舞庭は箒で丁寧に整えられ、ござが敷かれます。

獅子が幕屋から別当家の者に付き添われて出てきて、ござに坐り五つの場所を拝してまわります。
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次はしずめ、です。これが自分にとって西浦田楽を観た中で佛の舞と並んで印象に残りました。
しずめとは、田楽祭りにいろんな神々を観音堂に迎え奉り、この神々を元の本郷に送り返す舞。別当家の者に導かれて幕屋から出てきます。
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ござに坐して面を付けて印を結びます。
楽堂の地と「しずめ」と「とがめ」の問答があり、それが終わるとまた幕屋に戻ります。その、とがめと云うのが、能の翁の(とうとうたらりら)によく似ているのです。とがめに合わせて面を付ける所なども似ています。
能の翁とは、ここから発展したものなのだろうか?などの想像を掻き立てられます。養老年間からこの西浦田楽は始まったとされます。
この形が、後に一色能のシンガクになり、現在の翁へとなっていったのでしょうか?
最後に、はらい、です。火のうの面を持ち、ござに坐し、面を祓います。
水のうの面も同様にします。
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火のう面
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水のう面

これで西浦田楽が終わりました。
一色能の翁シンガクを観て、西浦田楽を思い出しました。
芸能の系統の流れを感じざるを得ません。
能の原点へさかのぼる事で、神道と能の繋がりを追求出来ればと思います。

参考文献
『西浦の田楽鑑賞の手引』
   水窪町教育委員会発行














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