観能記蔵出し

2016年1月2日に記したブログ蔵出し。


当時のブログ↓

実家帰省して、東京時代のダンボール整理を漸く始めました。
伊勢に行ってから、初めて携帯を持ったので、それまでの観能記は公開していなくてノートにまとめてファイルしていたのです。

1997年から2002年までの観能記とまとめは見つかりました。まだ見つかっていない年もありますが。

それらを、備忘録を兼ねて原則は編集せずにブログに書こうと思います。
観能まとめの蔵出しですね。

最初は2002年の終わりころに書いたと思われる、1997~2002までの観能ベスト3。
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ここからは、ほぼ当時の文章。↓(   )は注。




「能 1997~2002
 
1位「巻絹 イロエ」宝生会別会 1997/10/27 宝生能楽堂
シテ  松本恵雄  (シテ方宝生流) ワキ 鏑木岑男(下掛宝生流) 笛  寺井久八郎(笛方森田流) 小鼓  鵜澤速雄 (小鼓方大倉流) 大鼓 柿原崇志(大鼓方 高安流)
地頭 宝生英照。

2位「姨捨」宝生会別会 2001/09/29  宝生能楽堂
シテ 三川 泉(シテ方宝生流)。   ワキ宝生 閑(ワキ方下掛宝生流) 。笛 藤田大五郎(笛方 一噌流) 小鼓 幸 清次郎(小鼓方 幸清流)。大鼓  柿原崇志(大鼓方 高安流)太鼓  小寺佐七(太鼓方 観世流)。
地頭  近藤乾之助。

3位「定家」橋の会 2000/10/27  宝生能楽堂
シテ 友枝昭世(シテ方喜多流)ワキ 宝生 閑(ワキ方下掛宝生流)笛  一噌仙幸(笛方 一噌流)小鼓  北村 治(小鼓方 大倉流) 大鼓 亀井忠雄(大鼓方 葛野流)
地頭  粟谷菊生

最初はベスト10を作成するつもりであったが、このベスト3と、それ以外には、かなりの差があり、この3人はすぐに思いついたが後が中々出ない事でこういう結果とした。

松本恵雄師は正に一期一会の出会いとなり、それは自ら、観能での規範になり続けるであろう。

三川泉師は松本恵雄師引退後(シテとしての引退で、仕舞、舞囃子、地頭はその後も勤めた)私にとっても当代No. 1の能楽師である。その芸は松本師の巌の様な力強さとは異なり、やや線は細いが、その芯は強固でしなりのあるものだ。空間の嵐はやや奥行きのあるもので決して派手ではないがこの姨捨では子に捨てられる老婆が月夜の晩にじっと見つめているものだが、その空は晴れ渡る空ではない。雲の流れで月が時折隠されてしまいシテにも影が散らばれている。終曲にはゆっくりと膝をついて石になって終わるが、私にはそこに強い風が吹き荒れてシテは私の前から姿を消した。そう感じられたのだ。
三川師は計二十回観てるが(2002年終了当時)一番一番が私にとって空間の御馳走となっている。

友枝昭世師は今の能楽界で最も人気、実力が兼ね揃っている稀有な能楽師であろう。
還暦を過ぎたばかりの友枝師は今、全盛期を迎えている。この定家は最初から最後まで精神をむんずと掴まれたままで汗が止まらなかった。藤原定家の強い想いに蔦葛に閉じ込められた式子内親王の苦しみが氷のごとく冷徹に示される様は忘れる事が出来ない。
ただ、どれも綺麗にまとめ上げてしまう所があり、先の2人に比べると、この定家以外の能は私の魂を響かせてくれないのが気になる所ではある。しかし、松本師87歳(2002年当時。2003/02/05没)三川師80歳(現在93歳)に比べて友枝昭世師がこれからどうなるのかという希望は持っている。

ちょうど能楽界は今、時代の狭間の中で、シテ方、ワキ方、囃子方も新しい波が押し寄せている。それを命が続く限り見守っていたい。」



13年前の文章ですが、恥ずかしいですね。ほぼ当時の文章を再筆しました。
年間ベスト10のメモも見つかりましたので、後々アップしたいと思います。
                                 

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