向かい風

断捨離を始めた彼女から真っ先に捨てられることになり、俺の生活は荒れた。

コンビニのトイレを借りたのにガムを買わずに店を出た。

チーズバーガーのチーズ抜きを注文したり、誰からも指名されてないアイスバケツチャレンジをしたり、一つの部屋にルンバを2台放って戦わせたりした。

そんな俺に、見知らぬ大柄の男が声をかけてきた。

大柄の男「ウイー!」→(訳)帆船に乗って旅に出ろ!

俺「どちらさまですか?」

大柄の男「ウイーウイー!」→(訳)世界は広い!その目で見てこい!噛み合わないレスラーとだけはタッグを組むな!テキサスバーガーの復活はうれしい!だが、カロリーは高いぞ!

俺「何の話ですか?」

大柄の男「ウイーウイーウイー!」→(訳)テンガロンハットは手もみ洗いしてから天日干しだ!貞子より糖尿病のほうが百倍怖い!あぶない刑事は本当にあぶなかった!ファブリーズでも無理なときがある!BOSEのスピーカーでお経聞きたい!とにかく帆船に乗って旅に出ろ!

背中を押された俺は、なけなしの金をはたいて買った帆船に乗って海に出た。

荒れた海原で危うく転覆しそうになったり、クジラに衝突しそうなところを間一髪で回避したりと危険な目にあった。

立ち小便してたら虹が出て、海賊船に囲まれたりもした。

荒波に揉まれて帰国した俺は、帆船に携わる仕事を自ら立ち上げた。

アルフォートチョコから帆船をくり抜く仕事だ。

仕事を始めて10年、依頼はまだない。

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