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わたぬき


2年前、2018年の今日。
ベビーカーに赤ちゃんのような長男ぷくを乗せ、抱っこひもに入れた正真正銘赤ちゃんの次女まるをおんぶして、家を出た。
明らかに過積載のベビーカーと、赤ちゃんふたりを連れたボサボサの中年母の姿は道ゆくご年配の女性がたに「たいへん健気」と映ったらしく、何度も激励をいただいた。そのたびにぷくは笑顔で手を挙げた。
最初に保育ママさん宅のピンポンを押した。まるは背中からおろしても目覚めなかった。
次に保育園のピンポンを押した。ぷくは先生に抱かれながら満面の笑顔とお手挙げで私を送り出してくれた。

その2年前、2016年の今日。
長女つるが大きな新設保育園へ転園することになった。早朝から前の保育園がいいちゅう…と泣くつるの姿に胸が抉られる。
帰り道。つるを後ろに乗せた自転車を押して歩道を歩いていたところ、バランスを崩して自転車を転倒させてしまった。つるは痛いところはないと言う。すぐ前を歩いていたご年配の男性が振り返ってこちらへ戻ってきたので、自転車を起こす手助けをしてくれるのかと期待したら、ただ苦言を呈された。
「あなたさあ、もう母親なんだから。
 自分のことだけじゃなくてさあ、子どものことを一番に考えなきゃ。」
いわゆる最近の母親たちの姿に思うところがあったのだろう。自転車は自分で起こした。路上に散らばった荷物はつるが拾ってくれた。
近所の公園に立ち寄ると、同じクラスになったお友達とお母さんがいた。子ども同士・親同士楽しく過ごせた。つるの保育要件が鼻から経管栄養チューブをぶら下げたぷくの存在であることは、言えなかった。

その2年前、2014年の今日。
保育園へ向かう赤ちゃん・子ども達を羨ましく眺めながら、長女つるを抱っこひもに入れて近所を散歩した。
どのお母さんもフラフラしているように見えたし、どのベビーカーも大きな荷物で傾いていたし、どの電動自転車も激走していたが、それでも羨ましかった。
つるは待機児童だった。

その2年前、2012年の今日。
夫についた嘘は「実は最近、内緒で○▲□(高級焼肉の代名詞的な苑)に行った」だった。まんまと引っかかった。

その2年前、2010年の今日。
当時まだ彼氏だった夫についた嘘は「実は最近、ついに○▲□(高級焼肉の代名詞的な苑)に行った」だった。まんまと引っかかった。





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