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因果も縁起も突き破る「タキオン」が、宇宙の真の支配者か

COBRAの2024年6月17日の記事「Situation Update」で紹介された記事「The universe may be dominated by particles that break causality and move faster than light, new paper suggests」を翻訳しました。

※翻訳がお気に召しましたら、記事下部からサポートをお願い致します🙏

”科学者たちは、タキオンについての証拠も発見しつつあります。”

元記事

By Paul Sutter publishedApril 18, 2024


地球から16万光年離れたところで観測された、超新星爆発のガス球体。
(画像クレジット:NASA Goddard)

「この宇宙は、光よりも速い粒子“タキオン”の力で動かされているのかもしれない」

そう考えると、驚くほど辻褄があう。それが今回、二人の物理学者によって証明されたのである。

まだ査読が済んでいない最新の科学論文がいま、論争を呼んでいる。なんと、「宇宙はタキオン(光よりも速い粒子の仮名)で満ちており、タキオンで動いている」と言うのだ。普通に考えたら、タキオンなどというものがこの世に存在するはずはない。光よりも速いということは、時間が過去から未来に向かっていくという「因果関係(運命)」を覆してしまうからだ。

しかし、我々が持つ「運命は絶対」という概念を転覆させる可能性があるのがタキオンであるということから、物理学者にとっては長年の研究の対象となってきた。中には、タキオンこそが暗黒物質ダークマター(正体不明の物質)の正体であると主張する者もいる。

ダークマターとは、宇宙の大部分の質量を占めるという謎の物質のことだ。我々が普段観測し、認識できる物質を1とすると、その割合はなんと5である。しかし、天文学者も物理学者もその正体をいまだに掴めないでいる。学会での長年の疑問となっており、あらゆる手を尽くしてきたが、いずれの試みも失敗に終わっている。だが、失敗は成功の素でもあり、型破りな考え方が実は正しかったということも往々にしてあるもので、いつか突然その正体が暴かれるかもしれない。

ある研究者によると、宇宙がタキオンの力で膨張しているのなら、やがて膨張は減速し、その後再加速するという。この宇宙は現在、ダークエネルギーという名の謎の現象によって加速している段階にある。ここにタキオン宇宙論を当てはめると、ダークエネルギーとダークマターの両方を同時に説明できるかもしれないのだ。

彼らはIa型超新星爆発をタキオン宇宙論で読み解くことにした。

Ia型超新星爆発とは、恒星の最後の爆発の一種である。宇宙が膨張していることは、Ia型超新星爆発の観測を通して、距離と膨張率の関係性を測った結果判明したことだ。

ハッブル宇宙望遠鏡が銀河M82で観測されたIa型超新星。
天文学者はこの爆発を通して宇宙の膨張速度を推定できる。
(画像クレジット:NASA Goddard)

綿密な調査の結果、彼ら二人の物理学者は、これまでダークマターとダークエネルギーで宇宙が動いていたと思われていたところに、タキオン宇宙論を入れ込んで、宇宙論の神話を覆そうとしたのだ。いかに異端な理論であるかが、お分かりいただけるだろうか。

もちろん、まだ神話が完全に覆ったわけではない。現在の我々には、宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバン直後の放射の残骸)や、銀河系の大規模配置などの、宇宙の大規模構造を検証できるぐらいの材料は揃っている。問題はこの後、新しい理論を肉付けていけるかどうかだ。

タキオン宇宙論についてはどうだろうか?タキオンの時空を超えた性質は、とても実験対象になり得ない。その実在性さえも疑われてしまうだろう。しかし、新しい宇宙論はそんな時も前に向かって突き進むしかないのである。これまでも科学者はダークマターを50年かけて存在を突き止め、四半世紀にわたってダークエネルギーの正体を理解しようとしてきた。いまだ決定打は無いものの、いつか、まさかと思う方角から突然すべての答えが飛んでくるかもしれないのだ。


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