草の根って勝手に生えるのに、狙って生やそうとするのは難しい

ファン、サポーター、ブースター、ヲタク。

何かを応援する人たちに対する呼称は様々ありますが、その数の分だけ、何かを好きになった人がいるということでもあります。

今回は、プロ野球、広島東洋カープについて語っている、こちらの記事について。ポルノグラフィティ新藤晴一さん執筆です。

まず、私自身の話しで言うと、野球では東京ヤクルトスワローズが好きです。

ファンです、と言いたいところですが、神宮で観戦したことは無いので、そう言えるかどうかは微妙なところ。ただ、好きになったキッカケは、5歳のころ、父と東京ドームで観た初めてのプロ野球の試合が巨人対ヤクルトで、その試合でたまたまヤクルトがボロ勝ちした(たしかね)、という理由なので、歴としては20年以上、それなりにファンを名乗っても良いのでは、とも思っています。その当時はノムさん全盛期、ボロ勝ちしても不思議じゃない、ということはあとになってわかるのですが。

真中、稲葉、ペタちゃん、いま思い返しても素晴らしいチームでしたね、監督としてもみなさん活躍されていて、ファンとしては嬉しい限りです。

さてさて、晴一さんの記事に戻りまして。ヤクルトファンの自分と、カープファンの晴一さんとでは、そもそもの捉え方が違うようなのです。

広島の人にとってのカープの存在は、自分はファンであるだとか声高にアピールするものではなくて生活の一部なんですね。広島人が広島人に「俺はカープファンだ」と熱く語ったら、相手は困惑するでしょう。「俺は美味い食べ物が好きだ」というのと同じくらい普通のことで「お、おう」としか答えられないはずです。

こういう感覚は、外から見るのと中にいるのとでは全然違ってくるのだろうと想像しますが、それほどまでにカープが生活に根付いているというのは、羨ましかったりもします。それと同時に、この文化の中でサンフレッチェを浸透させていくことの難しさもあるんだろうな、と。対立するものではないでしょうが、どちらも共生していけることを願います。

普通、という言葉は使いどころが難しいですが、カープが普通に人々の共通理解の中にある、というのは良いですよね。また、

野球ファンというと、ビールとナイターが楽しみのお父さん、みたいなイメージもありますが、広島ではおばちゃんもカープが好きです。
広島の駅ビルでお茶を飲んでいたら、若い女性同士の会話で「今日、カープどこで見るん?」「家で見ようと思うとる」というのを聞いた

一部のコアな人だけではなく、大人も子供も、男性も女性も関係なく、みんなの中に浸透しているというのは凄いことだと思います。スポーツだけでなく、アイドルや音楽など、カルチャーを広めていくうえでぶつかるのが、コア層から一歩先に広げていく、という段階ではないでしょうか。イノベーター理論で言うところのアーリーマジョリティやレイトマジョリティの層がそこにあたります。そして、その層まで広まるがゆっくりと着実なものであればあるほど、その炎は長く灯り続けるはずです。

カープの話しで言えば、「ビールとナイターが楽しみなお父さん」から「お茶している若い女性」までに浸透していったその時間です。これが一気に火が付いたのであれば、それはいわゆるブームであり、いつかは下火になってしまいます。

しかしカープはそうではない。しっかりと、広島人に根付く形で浸透して文化にまでなったからこそ、スタジアムをいつも満員にしてチームが応援され続ける土壌が作られるようになったのです。

不甲斐ない成績にファンとしては腹立たしく思うこともありますが、せめているばかりじゃないんです。この辺りが、我々カープファンの裏腹な心情なんです。「そうか、わしらが応援せんとカープはダメかー」という親心。

そうやって土壌を耕し、種が蒔かれ、育った選手やチームだからこそ、そこに対して親のように愛情をもって接することができるのではないでしょうか。

少し異なりますが、インディーズバンドのファンも似たような心理があるように思います。デビュー当初、ライブハウスでの集客が2ケタの頃から応援し続けたバンドがやがて売れてきてメジャーデビューを目前に控えている、もちろん有名にはなってほしいけれど遠いところには行って欲しくない、嬉しくも切ないあの気持ち。

スポーツとバンドで違うところは、売れたかどうかではなく、勝った負けたがハッキリする、というところ。だから、みんなで応援することができて、その輪が広がっていきやすいのでしょう。バンドにもそういう面はありますが、より共感できて、人々を巻き込みやすい、という意味で書かせて頂きました。

。。。

Jリーグでも、「グラスルーツ宣言」があるように、今後、地域や文化に根差していく取り組みはより一層活発になっていくように思います。ふるさと納税や地方創生のキーワードも一般的に聞かれるようになっていますし。

「地元」がある人はもちろん、そうでない人も、いま住んでいたり働いていたり関わりのある土地に対して、少しでも好きになれたり愛着を持てるような「イイところ」を、探してみてはいかがでしょうか。

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