「動物福祉学」第2章 第3節より

動物福祉が思想から法律へと姿を変えているEUでは、繁殖豚の繁殖ストール飼育を2013年から禁止している。
一方で、分娩前後のストール使用については、EUでもしようが認められている。母豚が自由に動くことができるペンでの分娩は、子豚の圧死率が増加することが考えられるからである。しかし、自然下へ野生化した家畜豚では子豚の圧死はほとんど認められないことから、現在、分娩ストールをしようしないFree Following Systemの研究が進められている。
豚は鼻で地面を掘り返すなどのルーティング活動への発現欲求が強い。屋内外で繁殖豚の行動を比較すると舎飼い時に比べ屋外飼育時には、約18倍のルーティング行動が発現する。さらに、床にわら等の敷料がないと尾かじり行動が発現することが知られている。つまり、尾かじり行動は環境探査行動が発現できないという葛藤、欲求不満状態の行動転嫁として発現する。
床にわらを置いただけでも、尾かじりによる尾の深刻な損傷は10%以下まで軽減できる。