ソロのネクロマンサー

裏庭の墓を掘りたい。

14:42、低体温の風邪気味でなけなしのアルバイトを休んだ俺は、
大人の癖に大きな声を出して泣いた。一時的無職状態。
だからではない。端的に言って死を受け入れられないからだ。

いつか必ずやってきて、それでいて平等で理不尽なもの。

準備期の気が早すぎるのもそうだ。
現存の㌅やもんじゅうたちは、幸いなことに超元気だ。
ウェウェコヨトルの大トト様などご機嫌で毎日上下している。
一部は精神安定剤や消炎剤や勃起不全薬を飲んでいるが、
対処療法で何とかなる範囲だ。早く元気になろうね。
彼らの殆どは、中年だ。ナイスミドル。
ともにいられる時間は限られている。

裏庭の墓を掘りたい。
墓を掘れば亡きてんちゃんや、サブちゃんやトビちゃん、また幼少期にいたナモナキインチタチの骨格が残っていて、それはレプリカのように朽ちて動かないけれども、事実上また会える気がしてしまうから。
俺の家の裏庭は集団墓地だ。
レジリエンスなどない。ぶり返しの日々だ。
呪われている。

てんちゃんは俺の手の上で死んだ。
生まれつき呼吸器が良くなくて、いつもハフハフしていた。
ある朝、てんちゃんはいっそう呼吸が変だった。
すぐに病院に連れて行って、そのまま入院して、帰らぬ鳥となった。
見舞いの時、てんちゃんは管から酸素を吸入されていた。
俺は生きようとしていたてんちゃんを、これ以上苦しめたくなかった。
管を外して俺の手の上に乗せて、てんちゃんは直ぐに足をピンとさせた。

否、俺はてんちゃんを殺した。
一年にも満たない生だった。信じられない。
俺とチンタの事が大好きだったてんちゃん。𝐵𝑜𝑦𝑠 𝐿𝑜𝑣𝑒。
チンタはまだてんちゃんのことを憶えているだろうか。
㌅語においては、未だ「テンチャン」と呟くことは、ある。

俺はその日、ラウンドワンの夜勤だった。
クソお客様のオーダーが何も入ってこない。
ボロ筐体のメンテナンスに身が入らない。
上司っちに事情を聞かれ、話し、共に泣いた。

退勤。
早朝。墓前。スコップを握って、しゃがんで。





そうやって僕は鋼鉄になって。


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