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色覚異常の世界へようこそ

僕は所謂「色弱」と言うやつで、母方の祖父から隔世遺伝した色覚異常の遺伝子を持って生まれた。

僕の場合はピンクと灰色、緑と茶色と赤の区別がつきにくい。見えない分は濃淡で判断することになるので薄いピンクと薄い灰色は完全に同じに見える。


色覚異常で困ることといえば、焼肉屋に行った時に生肉を食べてしまうリスクと、飛行機のパイロットや電車の運転士になれないことくらいだ。パイロットになる予定はなかったし肉はもともとレア派だから、日常生活で「俺にはハンディキャップがある!」と感じることはまずない。

よくある質問で、「信号はわかるの?」と聞かれるが、あれは順番でわかる。真ん中が黄色で右が赤。最近のLED信号は赤と青がはっきり見えるからわかりやすい。


色弱歴34年にもなると、なんとなく物の形や与えられた役割で灰色なのかピンクなのか、赤なのか茶色なのかを判断できる。山手線は緑だと知っているし、赤いきつねと緑のたぬきはうどんか蕎麦かで見分けがつく。


困ったことがないわけでもない。

流石に服だけは友達と買いに行くようにしている。大学生の頃グレーだと思って着ていた服が全部ピンクだったらしく、それ以来一人で服を買いに行くことはやめた。

ファッションセンスがないのを色覚異常のせいにして友達に服を選んでもらっていたから、社会人になってからは割とまともな服を着ていた思う。

ピンクをピンクと認識せずに意気揚々とカヤックに乗る俺↓

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色覚異常にはメリットがある

小学生の頃、「色覚異常を治してあげたい」との親心から、うちの両親は何十万円も払って頭に電流を流す病院に連れて行ってくれた。
嘘みたいな話だが、

・鼻にスポンジを入れて電流を流す 15分x2セット
・こめかみから電流を流すの 30分x2セット

これをやると色覚異常が治ると謳ったクリニックが東京の目白にあったのだ。

和同会の闇↓ 


1日1時間半、電流のビリビリ(相当痛い!)を我慢すれば山奥から東京に遊びに行けると思っていた僕は、治療後に行う検査で「前よりカラフルに見える!」と嘘をついてこのトンデモ医療詐欺に加担し、両親が一生懸命稼いだお金を何十万とドブに捨てさせた。それと引き換えに、小学生の時に定期的に東京に行かせてもらったお陰で、東京にはたくさん人がいると言うことを学んだ。

祖父に”治療”のため東京に連れて行ってもらった時に、「じいちゃん東京は今日お祭りなの?」と聞いたらしく、祖父はその話を死ぬ間際まで嬉しそうに話してくれた。「詐欺られたけどあの思い出には何十万円の価値があるべ」と金主の両親も言っていたから、そういうことにしておこう。


で、その頃から気づいていた。

人と違う見え方の方が評価される場合がある。


変な色で塗った絵がなぜかコンクールで賞をもらえるし、変な色の服を着ていたら友達に個性的だと勘違いされる。


変な角度からコメントすると「本質を突いている」とか「変わった視点で面白いやつだ」なんて言われたりしてたから、高校・大学くらいまでの僕は変なことばっかり言っていたと思う。


流石にサラリーマンになってからは同質性を求められることに気づき、なるべく上司や先輩と同じ角度で発言するように心掛けた。最初は難しかったが、コツをつかんだらすぐ慣れた。大企業というところは人と違う見え方をしていたら生きにくい場所なんだなぁと悟った。

それからはTPOを読んでなるべく人と同じ色で世の中を見るようになった。だけど、たまに昔の名残で独特風に振る舞ってしまうことがある。これは僕が「本物の独特」なのではなく、独特な感じの方が面白いんでしょ?と思ってるだけだ。

だから僕が変なことを言っても、あぁまたこいつやってんなぁ。と生暖かい目で見守っていてください。


多様性・ダイバーシティ

色の見え方が違うのは生まれつきで変えられないが、物の考え方は訓練で結構変えられる。やけに否定的な人は世の中がセピア色に見えているし、意欲的な人はカラフルな感じに見えているはずだ。

自分の見ている色をコントロールできると、相手の見ている色に合わせて会話ができるようになる。特に外国人と仕事をする時には相手は全く違う色で世の中を見ていることがあるから、そういうのを感じるのも結構楽しい。


ダイバーシティとか多様性を育む系の教育プログラムは、超簡単に言うと相手の立場に立って物事を考えましょう。という取り組みだ。これを「相手の文化・環境・国籍・立場を理解しよう!」と言っても子供はよくわからないけど、「自分が見ているグレーは相手にとってピンクだった」というように色で説明すると途端にわかりやすくなる。

それもこれも、僕が色弱だからだ。多少意味わからん例えでもなぜか説得力が増す。


色弱という名の「特徴」は、今のところ僕にとってメリットの方が大きいようだ。少なくとも「ハンディキャップ」にはなっていない。

デメリットは、僕の娘が男の子(僕にとって孫)を産んだ時に色覚異常の遺伝子が出てしまうことだ。その時には、「悪いことばかりではないよ。」と色弱経験者として言ってあげたい。


色以前にファッションセンスが終わってる写真↓ お気に入りのセーターは嫁さんに捨てられました。。。

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