漫談「間違い電話」

知らないおばあちゃんから間違い電話が、2年くらい来てるんですけど。
ていっても、半年に2回くらいのペースで、
あ、半年に2回といっても、3カ月に1回って意味じゃなくて、4月に2回来て、10月に2回来るみたいな形で、

「よしえさん、私です。電話出てください」
「よっちゃん、なんで電話出ないの?なんのために電話持ってるの?」
「朝ですよ!起きなさーーーーーーい」(怒った声で)

って、とにかく迷惑なんですけど…。

どなたかわからない『よしえさん』って人と2年くらい間違えられ続けて、なんなら、なんで2年もこのおばあちゃんもよしえさんも気づかないんだろ?って。

もしかして私、おばあちゃんとよしえさんの百合に挟まれてます?
これがただの勘違いじゃなくて、不器用な二人のすれ違いラブコメだったら2年も時間かかっても仕方ないなって納得できるんですよ。
愛って長い時間熟成すればするほど美しくなるんで。

おそらく、このおばあちゃんは定期的に連絡したり、朝起こしてあげたり世話焼きでしっかり者ぶってるんですけど、電話番号間違えるドジっ子主人公。
よっちゃんこと、よしえさんはケータイ持ってるけど置きっぱなしで家を出るくらい物への執着がないし、朝起きるのが苦手な吞気な人なんですけど、心のどこかで「まあ、あの人がどうにかしてくれるか~」っておばあちゃんのことを信じてるんですよ。

だからこそ、今、危ないんです。
私がよしえさんみたいな電話番号してるせいで、二人は、2年会えておりません。
大ピンチです。

これ、私が「違いますよ」って教えてあげた方がいいんじゃないかって思ったこともありますよ?もちろん。
でも、おばあちゃんが間違い電話を2年もしてたって気づいたら、
「私がよっちゃんを助けなきゃいけないのに…よっちゃんに何も届いてなかった」って、長年よっちゃんを助けなきゃっていう、彼女の中で勝手に生まれて、一方的に募らせていた義務感がズタズタじゃないですか。
このクソデカ感情が崩壊してしまうと、このラブコメの世界がバッドエンドになってしまうんですよ。

だから、私はこの場を借りて声を大にして言います。
この中によっちゃんはいますか!
今すぐ、あなたに気遣ってくれてるあの人のもとへ行きなさい!
そして、思いっきり抱きしめてください!
早く!今すぐ!
この会場から出ていけー!

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