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彼岸花によせて

彼岸花が好きだ。曼殊沙華やリコリスなど別名の言葉の響きも好きだ。

幼い頃は色鮮やかな大輪の花が好きだった。
咲いている花を手折って持ち帰り、写生しながらカッコイイなと思った。

小学生になり友達といつものように彼岸花を写生していたら、その子の母親に厳しく怒られた。毒のある花だから、すぐに手を洗いなさいと言われた。小さい頃から触ってるけど、なんともないのになと不思議な気持ちで怒った顔を見上げた記憶がある。
そして彼岸花をもっと好きになった。綺麗なのに毒があるなんてカッコイイと思った。

もう少し成長し、彼岸花にも葉があることを知る。
人知れず寒い間に葉を茂らせて栄養を蓄え、草木が生い茂る春夏に姿を消し、秋に茎を伸ばして花を咲かせる。
なんてカッコイイ生き方なんだと憧れた。
10代や20代の頃は、努力している姿や苦しむ姿を見せるのが心底カッコ悪いと思ってたのだ。

今は毎年鮮やかな色を見るのが、ただ嬉しい。少しノスタルジックな気分にもなる。川べりの目立たないところや、すぐに刈り取られる公園の隅でも、まっすぐと咲いている。とてもカッコイイ。

彼岸花は誰かのために咲くのではない。それでも毎年咲いて、私に豊かな感情をくれる。そんな彼岸花が大好きだ。

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