見出し画像

あの階段を上がって

去年の今頃は、夕方から夜になるこの時間に、お母さんが入院している病院に、毎日歩いて通っていた。暗くても寒くても、病室に行けばお母さんがいた。
お母さんは弱っていたけれど、私を判ってくれて、皺々の手を振ってくれた。

お父さんの事もお母さんの事も好きだった。
受け止めてもらえなくても好きだった。
私はその事をちゃんと思い出すため、
確かめるため、この土地に戻って来たんだと
ここ数年の流れを思う。

今夜は大きくて綺麗なお月様が夜空にあって、風がとても強い。
もう会えない。あのお月さまのように遠い。
でも私は好きだった。
ただ、好きだった。
子供だから。2人の子供だから。

今でも、今夜のようにあの道を歩くと、
あの病院のあの玄関から入って、
あの階段を上がって二階の部屋に行くと
お母さんのベッドがあってそこにいてくれたら
すぐに行くのにと思う。
弱っていても話せなくても、
行って手を握りたいと思う。
お母さん、大好きだった。
今頃、判ったよ。

サポートをよろしくお願いします!お金は全額を骨髄バンクに寄付します。