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脳ドックとオプション

だいぶ前に、脳ドックを受けた。きょうだいが脳梗塞をしているのと、近年自身の不整脈が頻回になり、それが脳梗塞に繋がる原因にもなる、となにかで聞いたからだ。

病院選びは携帯で検索し、近隣の中で画面上1番上にヒットしたところにした。保険がきかないので、高額だが、命にはかえられない。それとは別にオプションとして、心電図や認知症の検査も受けられる事がわかった。

色々考えていくと、私は興味の無い事は中々覚えられない。俳優さんの名前は覚えられるのに、例えば戸口の暗証番号だったり、お茶碗の柄が誰のものか等をずっと覚える事が出来ない。又、心臓の不安も拭えなかったので、オプションとして、心電図と認知症の検査をつける事にした。

どきどきと、心臓が鳴る。普段と違う事をすると極度の緊張に襲われる私だ。自転車で3駅向こうの市に位置する病院へと向かった。

到着し、諸々の手続きを行う。検査は心電図からスタートした。だいぶどきどきしているが、大丈夫だろうかと心配する。何とか終わり、MRIへ。

MRIの技師さんがスイッチみたいな物を私に握らせ
「何かあって、どうしても駄目だとなったら、このスイッチを押して下さいね」

と言われる。物凄く狭いカプセルみたいな場所に横たわり、四方八方逃げ場が無い。そしてカプセルの親分みたいな箇所にガチャリと装着された。私は過呼吸のような状態に陥って、その時に初めて閉所恐怖症なのだと、知る。

しかし、このままでは検査が出来なくなる。呼吸を整える事に集中する。大丈夫だ、大丈夫だ。スーハー、スーハー、繰り返して自分で自分の腹をさすりながら、何度もつばを飲み込む。すると、ゆっくりではあるが、呼吸が整ってきた。私は大丈夫だ。このままいける!どうなる事かと思ったが、MRIも無事終了。

次は問診をしながら認知症の検査となった。
「はい、〇〇さんこんにちは。ここがどこかわかりますか?」
「はい、〇〇病院です」
「何市にありますか?」
「〇〇市です」
「はい、よく出来たね」
やさしく、子どもに語りかけるように医師は続けた。
「このおぼんに沢山の物が乗っています。3つ覚えて心の中で留めておいて下さい。まだ言わないで下さいね」
おぼんの上には、腕時計やらスプーン、細々としたものが乗っていた。3つ覚え、心の中に留めておく。

すると医師は、全く違う世間話をしてきた。それらに答えて随分と時間が経ってから
「はい、先程の覚えた3つの物を今おしえてください。」
無事、言う事が出来た。

次は物凄い難しい引き算を暗算で何問か行った。算数や数学が苦手な私は、とことん堂々と間違えた。これには看護師さん含め医師も苦笑いだった。

「ま、苦手……なのかもしれないね」

検査は終了し認知症に関してはその場で心配いらないでしょう、との診断が下された。
「あなたの年齢で認知症は考えにくいです。もし記憶や物覚えに不安があるならば、違う方面、膠原病やうつ病を疑った方がいい」

との事だった。

初めての経験だったが、ずっと心配していた事が解消されて心が軽くなっていき、帰路につく自転車を漕ぐ事も、こころと同様に軽くなったのが、わかった。


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