カラーテレビの思い出

 昼の日差しの明るく差し込む腰高窓の枠に座っている。そこは、我が家が借りていたアパートの部屋の窓。一階で、窓の外側の1/4位に柵状のものが付いていて、枠の高さも小学生の自分が座っても畳に足が付くくらいだ。
 そこで、新聞を開いてテレビ欄を読んでいる。当時のテレビ欄は、新聞の中ほどにあったのだ。新聞に陽があたっていて眩しいという記憶はない。部屋の中が薄暗く、窓際だけが明るく陽が照らされているイメージ。
 当時のテレビ欄には、カラー放送には「カラー」の表記があった。自分は、暗い部屋の中の母親に話しかけている。
「ねえ、母さん。カラーって書いてあるのは、おうちのテレビでもカラーで写るってことなの」
 我が家のテレビは、良く故障する白黒テレビで、カラー放送なんか写るわけないのに、何故だか記憶の中の自分は、明るい窓際から、暗い部屋の中の母親に話しかけている。記憶は、そこまでで、母親からの返事は覚えていない。

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