見出し画像

2022年中学受験を終えて

今年の受験生は、2年間に渡り学校や塾でさまざまな制約を受けながら、受験に臨んだ子どもたちでした。突然の一斉休校、経験したことのないオンライン授業、修学旅行をはじめとする学校行事の中止や延期。どこに行っても検温、消毒、マスク着用が求められ、楽しい給食やお弁当の時間も黙って食べなくてはいけませんでした。気軽に友達と話したり、じゃれ合ったりすることもできませんでした。そして年が明けても過去最多の感染者数を更新するという本当に厳しい中での人生初めての受験。最後まであきらめずに受験しただけでもとても立派なことだと思います。

受験がすべて終わって、これまで使った大量のノートや問題集、プリントを整理していくと、「これだけの量をよくがんばったなあ」ということを感じるでしょう。塾に通い始めたころと比べれば背もずいぶん高くなっています。心の面でも成長しているはずです。ふり返ればそうしたわが子の成長に気づく余裕もあまりなかったのかもしれません。でもそれは中学受験というものに親として真剣に向き合ってきたからです。思い通りの結果が出た方、想定外の悔しい思いをした方、それぞれに思うところは違うと思いますが、すでに偏差値は過去のものなのです。進学先が決まったら、胸を張って次のスタートを切ってほしいと思います。

フィギュアスケートの羽生選手が、ソチオリンピックで金メダルをとった直後のインタビューで、「今一番したいことは?」という質問に、「早く練習をしたい」と答えていたのが印象的でした。金メダルをとっても満足のいく演技ができなかった彼にとっては通過点でしかなかったのでしょう。今回の北京オリンピックの結果はこれを書いている時点ではわかりませんが、常に成長し続けたいという姿勢はこれからも変わらないでしょう。

受験も同じです。それがゴールではない。終わったあとも「もっと勉強したい」と思えるような受験をしてほしいのです。だれに言われたわけでもなく、志望校合格後も自習室に来て、当たり前のようにその学校の入試問題を解き直しをしている姿に、「これこそが伝えたかったことなんだよ」と結果以上にうれしくてたまらなかったことがあります。周りからは、「受験が終わったのだから少しのんびりしたら」と考えがちですが、「勉強することが楽しい」という経験をした子どもたちは、読書やスポーツを楽しむことと同じように勉強がしたいのです。

ところが、とにかく結果を出すことだけが優先され、大人主導で受験学習が進むと、こういう子どもには育ちにくい。受験が終わった瞬間に、勉強の「べ」の字も見たくなくなる。精神的なストレスに耐えられる子どもはまだよいのですが、勉強そのものから早く逃げ出したいという思いから、間違った方向に学習が進んでしまうと、たまたま結果が出たとしても、心が伸びきってしまいその先が心配です。やらされている勉強は楽しくない。楽しくないものを長時間やり続けたら嫌いになるのは当然です。ところが、自分の意志で取り組む勉強は楽しい。楽しければ多少量が多くても時間が長くてもやり遂げられる。人間は夢中になったら疲れないのです。大切なことは、子どもが学びに対して前向きな気持ちでいることなのです。そして本気でやれば楽しいという経験です。理想論を言いたいのではなく、中学受験を通してそういう次につながる学びを経験してほしい。ただそれだけです。

新しい制服の採寸が済むと、間もなく小学校の卒業式。受験生の親としての役割もこれで卒業です。思うようにいかないことに自問自答を繰り返しながら、したくもない親子げんかの毎日。語りつくせないほどいろいろなことがあったでしょうが、受験を通してともに過ごした苦楽の時間は親子にとっての大切な思い出です。次のステージでのさらなる成長を願って新しい門出を誇らしく見送ってほしいと思います。充実した学校生活を送れるよう、ぜひ親がその一番の応援団になってあげてください。

受験生、そしてそのご家族の皆さま、本当にお疲れ様でした。そして、次の受験生とそのご家族の皆さま、それぞれの夢をかなえるためにともにがんばってまいりましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?