見出し画像

小寺の論壇:6年ぶりの新エンジン。「ATOK2023」の今

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


モノカキにとって、キーボードは絵筆のようなものであるが、日本語変換エンジンはさらにもっと奥深いところにあるツールである。自分の頭の中にある文章を実際に文字化していく際に、同音異義語で誤変換されたり、あるいは求める漢字が全然出てこないと、思考が止まってしまい、どう話を展開したかったのか忘れてしまうことがある。これはストレスというより、まあまあ死活問題となり得る。

現在日本語変換エンジンは無料でも優秀なものが多く、Windows付属のIME、MacOS付属の日本語変換、Google日本語入力などを使っている人も多いだろう。ライターでもこれらを使う人は多い。

そんな中で有料の日本語変換エンジンであるATOKを使っている人は、やはり文章を書くことを生業としていたり、遙か昔から使い続けているために他のものではしっくりこないとか、そういった割と少数派だろうという気はしている。

筆者がATOKを使い始めたのは、おそらく1995年ごろだったように思う。ライセンスキーが「95」で始まるので、おそらくそうだ。この頃から徐々に文章書きの仕事が増えて行き、Windows標準のIMEでは対応できなくなって購入したので、もうかれこれ25年以上使い続けている事になる。

ATOKは現在売りきりではなく、ATOKパスポートという年額のサブスクサービスみたいなモデルになっている。バージョンが更新されるごとに買い換えるわけではなく、自動的に最新バージョンを使える権利を有するという格好になっている。

そんなわけであまりバージョンアップには関心を払っていなかったのだが、先日ふとそう言えばATOKの新バージョンってどうなってんのかなと調べたら、なんと2月にWindows版が、6月にMac版がアップデートされているのを知った。自動アップデートだと思っていたので放置していたのだが、どうも勝手にアップデートはされず、手動でアップデートするようだ。

そんなわけでせっかくアップデートされたのに1カ月ぐらいそれを知らず旧バージョンを使い続けていたことになる。くやしい。

そんなわけで今回は、新ATOKの話である。

■「ユーザー辞書」を超えるパーソナルAI

ATOKが変換にAIを取り入れたのは結構早く、1993年にはすでにAI変換を謳っていた。ただ、AIだから変換効率が上がるかと言えばそういうこともない。2017年にはディープラーニングを取り入れているが、この頃に誤変換がドッと増えてしまった。

ATOK変換エンジンの変遷

よって筆者もこの頃ATOKの利用を諦め、当時変換動作不要で入力しながらどんどん変換していくというライブ変換を搭載したmacOSの日本語変換に乗り換えたりしていた。ただこのエンジンは日本語と英語混じり、もっと言えば数字も含めた全角半角混ぜ打ちの文章入力に弱く、筆者のような技術系の物書きにはちょっと使いづらいところはあった。

当時はGoogle日本語入力なども精度が上がってきたこともあり、色々乗り換えながら仕事していた。再びATOKに戻ってきたのは、2020年頃だろうか。正確には覚えていないが、この頃タイプミスをしても前後の文脈を察して正しく変換するという機能が搭載され、他の入力エンジンとの差別化に成功している。

今年の新エンジンとなる「ATOKハイパーハイブリッドエンジン」は、従来のディープラーニングによるエンジンと、「パーソナライズドコア」と呼ばれる個人の入力を学習していくエンジンのハイブリッドになっている。つまり使っていくほど個人の傾向を学習し、次第に変換精度を上げていくという。

ここから先は

1,778字 / 3画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?