見出し画像

小寺の論壇:4KBS左旋放送の現実

区切り線

菅義偉首相の長男である菅正剛氏が総務省幹部を接待した問題の調査から派生して、東北新社の放送サービスである「ザ・シネマ4K」のサービスが終了することとなった。放送認定時に外資規制法違反があったことの処分として、事業者認定が取消になったからだ。

筆者が記憶する限り、放送事業者の認定取消は放送法施行後、初ではないかと思う。放送とは認定事業であり、放送法は法に違反した事業者の認定を取り消すことができると規定して、法に強制力を持たせている格好だ。しかしこれまで認定取消事業社がなかったということは、それだけ放送事業者というのは、手厚く守られた事業であるという裏返しでもある。

例えば地上波キー局が認定取消ともなれば、年間数千億円規模の事業が吹っ飛び、1億1千万人の全国民への影響は避けられない。そうした判断を総務省がやれるのかといえば、実際には「全国民への多大な影響をかんがみて」といった高度な政治判断が行われる。

今回「ザ・シネマ4K」の認定取消が実施された背景には、このチャンネルの契約者が約700人という、影響の小ささはあったはずだ。

しかし衛星放送とはいえ、4Kの有料放送の契約者がたった700人しかいないというのは、衝撃的である。衛星放送は直接受信以外にケーブルテレビ経由の契約もあるが、比率としては直接受信7、ケーブルテレビ3ぐらいの割合なのが普通だ。トータルでの契約者数は1000人前後といったところだろう。

これは放送事業としては、ビジネスになってないレベルである。ネットでさえ、コンテンツサービスの顧客が1000人しかいなければ詰むだろう。

■BS・左旋チームの内訳

「ザ・シネマ4K」が事業を展開していたのは、BS・左旋チャンネルである。これまで衛星放送では、電波を右旋(右回り)で送出してきたが、4K化により広い帯域が必要になったことから、新たに左旋(左回り)でも送出するようになった。従来の設備では右旋しか受信できないため、左旋を受信するためには、アンテナを含め、新たに両方が受信できる設備への交換が必須となる。

現在BS・左旋で放送している事業者は、以下のようになる。

・ショップチャンネル4K
・4K QVC
・ザ・シネマ4K
・WOWOW 4K
・NHK BS8K

新4K8K衛星放送に参入する事業者(総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/4k8k_suishin/companies.html

BS左旋放送の目玉は、NHK 8K放送だ。だがご承知のように8Kテレビなどはまだまだ一般庶民には高嶺の花であり、自宅で視聴可能なのはごく一部の富裕層に限られる。

今年3月1日からWOWOW 4Kが放送を開始したところだが、4月いっぱいで「ザ・シネマ4K」が抜けると、残りはNHK、WOWOW、ショッピングチャンネル2つになる。正直放送としては、厳しいラインナップといわざるを得ない。総務省では2019年にBS左旋・110度CS左旋の新規事業者を公募したが、応募者はゼロであった。

ここから先は

1,442字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?