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小寺の論壇:ウクライナ侵攻報道の危うさ

2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻は、3月3日に「人道回廊」の設置にともなう停戦で合意したにも関わらず、実際には攻撃が停止していないとして、すでにコントロールを失っているように見える。人道的措置を無視するということは、国際社会全体を敵に回す事は必至である。

日本は日米安全保障条約もあり、西側諸国の一員という事になるが、この戦争に関わる報道は、常に西側の立場から報じられてきた。戦争とは常にお互いが正しいことをしていると思っていてやっているものであるが、ロシア国内はどうなっているのか、という点について、報道のバランスが悪いように感じている。

これ、言い方がすごく難しいところで、誤解のないようにお願いしたいのだが、筆者は永らく報道の現場にいたこともあり、多くの人が無条件にロシア人が悪いと思っているのは、マスコミの取り上げ方のせいではないかという自責の念がある。テレビ放送は、世論の増幅装置であり、世論の求める者を提供する立場にある。だが報道だけは別の話で、無条件に「勝ち馬に乗る」やり方をすべきではない。両論を併記すべきなのであるが、残念ながらもうすでにバイアスがかかっている。そこが、戦時下報道の恐ろしいところだと思っている。

今回はあえて、耳障りのいい事ばかりではない話をしてみたいと思う。

■ロシア政府のメディア規制

BBCが報じたニュースは、ロシア国内の国営テレビでこの戦争がどのように報じられたかを伝えている。

・ウクライナ侵攻をロシアのテレビで見る まったく別の話がそこに 
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60614298

国営テレビであるがゆえに、報道は政府見解の方向性をそのまま伝えている。そしてウクライナ寄りの報道を「フェイク」だと断じている。

もともとウクライナは、ロシアを凌駕するレベルのIT大国である。正直、情報戦の上手さではウクライナに軍配が上がる。すべての報道がフェイクではないとは言い切れず、マスメディアが報じたニュースにも、フェイク画像や動画が含まれていることはあり得る。それはウクライナから発信されたものもあるだろうし、無関係の国からおもしろ半分で発信されたものもあるだろう。

なおロシアでは4日、ロシア軍の活動について虚偽の報道をした場合、最高で15年の禁固や懲役を科すという応安が可決された。何を以て虚偽とするかは、言うまでもない。政府の意に沿わないものはすべて虚偽となるわけで、真実は政府が作る。

・焦りの表れ?情報統制、批判封じに“なりふり構わず”(2022年3月5日 ANN)
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=DjUebgBmApw&t=0

すでにロシア国内では、有力ラジオ局「モスクワのこだま」、テレビ局「ドシチ(雨)」の放送遮断を決定しており、両局は活動停止状態にある。またこの法は海外メディアにも適用するということで、BBCやブルームバーグ、カナダ放送協会らがロシア国内での取材活動を一時停止している。

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