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庄司昌彦教授に聴く、行政DX最前線(1)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


今回からの対談は、2回目の登場となる武蔵大学社会学部メディア社会学科教授の庄司昌彦さんにお願いした。

前回対談したのは2022年5月の事で、ようやく始まった地方行政DXのお話しを伺った。行政のDXは地味なテーマではあるが、我々が今後老後を迎えた際にガッツリ関係する事であり、今ここでしっかりやっておかないと、年金を貰う歳になって同じような書類を20枚30枚記入するようなハメになる。

そんな地方行政DXを推進している人達が集まる会議、行政デジタル改革共創会議「デッカイギ」の2回目が開催された。今回の対談は、この会議の直後に行なわれたものである。

地方行政DXは、今どのあたりを走っているのか。


庄司:あけましておめでとうございます。

小寺:おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。デッカイギ、お疲れ様でした。なんかちょこちょこ記事にもなり始めていて、盛り上がりつつあるのかなと。

庄司:そうなんです。ただチャタムハウスルールといって、誰が言ったとは書かないという、そういうルールでやってるので、記事にちょっとしにくいんでしょうけど。

小寺:ああ、そうなんですね。

庄司:そうです。本音トークを重視して。ですけど、まあぼちぼち、時事通信さんとか、公務員用のメディアには、「今週いっぱい毎日載せます」とか言っていただいているので。

小寺:(笑)。今回は「火中の栗を拾いに行く」というキャッチフレーズも聴いているんですが、蓋を開けたら燃えてる栗だらけだったという話が漏れ聞こえてくる。

庄司:でも、本当はですね、東京都の宮坂(学)副知事がメッセージを寄せてくれたんですけど、それが面白くて。「火中の栗を拾いに行ったらですね、栗は、火もついていない、冷たい生栗だった」という(笑)。

小寺:そうなんだ(笑)。そういうとこもあるんだね。

庄司:冷やーっとしてた、と(笑)。

小寺:(笑)。前回地方行政DXのお話しを伺ったのって結構前で、実は2022年の6月ぐらいなんですよね。で、今回は「デッカイギ」が開催されたタイミングでもう一回お話しを伺っとこうと。

前回は2025年度末までに、一斉にスタートラインというか、共通仕様に乗るんだ、というところまでお話を伺ってきたわけですけれども、それがいよいよ、残すところあと2年。今年が正念場と言われてるところなんですが、まず、デッカイギの話からちょっとお伺いしていいですかね。そもそもこれは、何の目的で、いつぐらいから始まったということなんでしょうか。

庄司:1年前ですね。2023年1月が第1回のデッカイギ。なんでそういう会議をやろうという話になったかというと、いくつかの文脈があるんですけど……。

僕にとっては、行政のデジタル化は国と自治体が一緒になって進めていかなきゃいけないし。国と自治体と、ベンダー、企業ですよね。それらが一緒になって、○○検討会とかの会議に参加している委員、有識者枠の人たちとかもみんなで一緒になって、やっていかなきゃいけないわけですけど、意外とお互いに距離が遠いんですよね。情報がない、情報がないって、ずっとみんな不満を言っているという状態だったので、やっぱりこれは顔を合わせて、腹を割って話すべきではないか、というふうに、問題意識を持ってましたと。

国と自治体の間はですね、実は、デジタル庁が主催しているSlackがあるんですよ。「共創プラットフォーム」というんですけど。そこでは全国の自治体職員が参加して、国に質問したり、あるいは自治体職員同士のグループみたいなのを作ったりとか、いろいろやってるらしいんですけど、公務員じゃないとそこには入れませんということで、僕からは何も見えない状態。

小寺:ああ、ホントに公務員じゃないと入れないんですね。

庄司:企業の皆さんは、なんかうまいこと言って見せてもらったりとかしてるみたいですけど、でも、表には情報はなかなか出てこないということで、よくわからないと。だからそういう共創プラットホームというクローズドな場でやってるんじゃなくて、外で議論させろよ、しようぜというのがありましたということですね。

そういう話をしてた時に、同じような問題意識の人が周りに何人かいて。デジタル庁の中でも、楠(正憲)さんとかですね。いろんな自治体の職員の方だったり、記者の方だったり、そういう問題意識の人たちが集まって、飲み会で盛り上がって「やろうぜ」ってなったみたいな、そういうところがありました。

あと僕らのITの分野だと、白浜シンポジウムとか、道後温泉(サイバーセキュリティシンポジウム道後)とか、越後湯沢(情報セキュリティワークショップin越後湯沢)とか、セキュリティ関係とかで毎年やってるイベントがあるじゃないですか。ああいうの、いいよねと。温泉とかで、なんかいろんな人が喋るのいいよね!みたいな。

小寺:やってますね(笑)。僕越後湯沢のやつ行ったことあります。

庄司:そういう憧れみたいなのもあって、やろう!と。で、2025年度末、令和7年度末を越えたら、みんなでお疲れ様会をやろう、みたいな、なんかそういうことで盛り上がってって、企画をすることになったということですね。

で、公式な言い方をすると、大変だとか情報がないとかって言いながら、でも皆さん、現場で頑張ってるわけですね。特に、改革の中心になってる人たちというのは、現場からも反発受けたりとか、あるいは上からも「なんでそんなことやるんだ」とか「金がかかりすぎだ」とか、いろいろ言われながら、皆さんそれぞれの自治体でバラバラに頑張ってるわけですね。そういった人たちが、1人じゃないんだよ、俺たちみんな仲間だよね、頑張ろうね、みたいなこととか、立場を超えて意見交換しようとか、そういう、人を繋ぐ場を作りたいということで、対面にこだわってイベントを企画したと、そんな感じですかね。

小寺:なるほど。そして今回の2024年1月5日、6日が2回目ってことですかね。2回目で結構大きくなったという話を伺いましたが、参加者は何人ぐらい?

庄司:ええと、まだ今は正式な数字が出てないですけど、400人ちょっとですかね。ま、でもね、1回目も300人近かったんじゃないかな。

小寺:国の公務員も地方からも公務員の人がやってくるという。公務員同士はもちろんのこと、そこに庄司さんみたいな「会議してた人たち」も参加するというような感じですか?

庄司:そこが結構、僕らの中でも手探りで。主役は地方公務員で間違いないですね。現場で頑張っている人たちのためのイベントということなんですけど、あとは、国の公務員の人にも参加してほしいですね。デジタル庁の人たち。あとは総務省とか。

ただデジタル庁は、幹部職員――楠さんとか村上敬亮さんとか有名な人が何人かいるんですけど、今年度だと特に自治体から出向でデジタル庁に来てる人が実はいっぱいいるんですよ。出向というか、兼任というんですかね。地元から週2日だけオンラインでデジタル庁職員やってます、みたいな人とかが。

小寺:へえ、今そんな感じなんですか。

庄司:うん、結構いるんですよ。だから、そういう人たちなんかもメインターゲットでした。あとは、協賛企業ですね。公務員から参加費をとって回すというよりは、交通費を負担して来てもらうので、参加費は無料にしようということにしたくて、協賛企業をたくさんお願いしています。で、その協賛企業の方々がいると。ただ、協賛じゃない企業の方を入れようとすると、もう枠が足りない。

それから会議してた、有識者委員とかというのも、1回目はあんまりいなかったですね。登壇者としては合計でも十数人とか、そのぐらいのレベルなんじゃないかな。今回は少し増やして、20人とかになったのかな。あと今回はメディアの人も増やしました。ま、それでも数人ですけどね。

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