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小寺の論壇:新iPad報道に見る、ジャーナリズムの歪み

5月7日に登場した新iPadは、同時に公開されたAD動画で一悶着あったところだが、徐々にiPad本体に関する報道も増えてきているところだ。

筆者も以前iPad Proを使っていたが、今は娘が学習用に使っている。動画を編集する仕事が多いことから、iPadOSよりmacOSマシンを強化した方がいいという判断である。

新iPadも購入予定はないのだが、今回はFinal Cut Pro 2もリリースされ、マルチカメラ収録に対応するということで、そのうちAppleから実機をお借りして試してみないといけないだろう。

先日もプロ向けのメディアのために、このマルチカメラソリューションのことを調べようと多くのサイトを調べたのだが、得られる情報は少なかった。おそらく、iPadを報じるメディアやジャーナリストに、マルチカメラ収録の知識や経験がないからだろう。ほとんどはAppleの公式リリースそのままの文章が掲載されているだけであった。

それはまだいい。プレスリリースとは、そう使われるものだからだ。製品発表直後の情報、いわゆる速報はそうした手法で報じられる。

その次は、実際に発表会などへ行き、そこでの反応や現物を触った感想、そこから得られる知見など、もう一歩踏み込んだ報道が出てくる。西田さんが得意とする分野である。これが実際にソースを自分で取材している「1次情報」である。

ところがこうしたタイミングで大量に投下されてくるのが、いわゆる「コタツ記事」である。

■コタツ記事の定義  

コタツ記事とは何か。定義は色々あるが、筆者は次のように考えている。

1.ソースを取材していない

メーカーから発するニュースリリースを参照しているならまだしも、速報で報じたメディアの記事を参照しており、情報の一番最初に当たっていない。加えて、情報ソースを示していないため、それが正しい認識の元に書かれているのかがわからない。

2.考察していない

プレスリリースや速報のあとから出る記事には、それの次の段階である考察や推察などが含まれ、内容の深化がみられるのが普通である。だがあちこちの報道を繋ぎ合わせ、そこで拾った考察までも借りてきて結論としている。手法としては、過去流行した「2chまとめ」の手法に近い。

3.センセーショナルな見出しで煽る

ニュースメディアは主に広告収入で成り立っており、記事が多く読まれなければ存在できないという宿命にある。このため、見出しをいかに工夫するかは非常に重要なポイントではあるが、本文のレベルに見合わない壮大な見出しだったり、本文で結論を出してしないのに「○○な理由とは!?」のような、興味関心を煽るだけの見出しを付ける傾向がある。

今回発表のiPadは、新プロセッサに変わった事や円安の影響、アクセサリも新規買い直しになることから、トータルではMacBook以上の価格になる。しかしそのことだけを取り上げて、「高いなぁ、買えないなぁ、でも買っちゃうかも」みたいな、読者からすればオマエの感想なんか知ったことかという、ふわっふわした結論の記事が大量に投下されている。これは、考察ではない。

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