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松竹映画の金田一耕助譚

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


YouTubeチャンネル「松竹シネマPLUSシアター」にて、1977年公開の映画『八つ墓村』が期間限定で無料配信されている。おそらくAmazon Primeの「プラス松竹」のプロモーションの一環だろう。無料配信期間は2月15日までなので、見るなら来週半ばまで、という事である。

・『八つ墓村』【公式】

横溝正史原作の金田一耕助シリーズは、1970年代半ばに映画やテレビでブームとなった。筆者は当時中学生で、テレビシリーズを見て夢中になり、原作の小説を次々に読破していった頃である。映画はレンタルビデオに存在するものは一通り見たつもりだったが、この松竹の「八つ墓村」だけは見逃していた。

それというのも、金田一耕助役として後にも先にもこれ1作のみという、渥美清が演じていることで、後回しにしてきたからである。そんなわけで、昨日早速見て見みた、というわけだ。

今回は70年代の横溝正史ブームと、松竹版「八つ墓村」の映画を論じてみたい。

■1970年代半ばの怪奇ミステリーブーム

1976年、筆者は中学1年生だった。この年、角川春樹事務所制作東宝配給の、いわゆる角川映画版「犬神家の一族」が公開された。通学路にある電柱に、湖から逆立ちして足だけが出ている映画ポスターが延々と貼られており、今考えれば非常に教育上宜しくない宣伝がなされていたのを覚えている。

とはいえ、すぐに映画を見に行ったわけではない。中学1年生にとっては、恐ろしいだけの映画にわざわざカネを払うぐらいなら、もっとSFやファンタジーといった楽しげなものにカネを払いたい。実際翌年の1977年に映画「STARWARS」が公開されて大ヒット、翌年の「未知との遭遇」も大ヒット、それ以降洋画では続々と宇宙ものが制作されていき、そういうものにせっせとお金を使っていた。

一方で怖い思いまでして映画を見る度胸はないが、あのポスターの意味は一体何なのか興味はあった。そこで角川文庫から出ていた原作を読み始めた。金田一ものは中学生のうちに、主な大作はだいたい読んだはずだ。高校ではあまり読書する時間も取れなかったが、就職してから横溝正史の本の収集を始め、概ね揃えることができた。勢い余って「人形佐吉捕物帳」まで全作揃えてしまったのは、余計である。

折しも映画情報サイト「CINEMORE」では、「その時映画は誕生した」という連載で「八つ墓村」が取り上げられているところだ。前編中編後編に分かれる大作だが、松竹版八つ墓村については中編あたりから読まれるとちょうどいいだろう。

これによれば、映画制作のスタートとしては、松竹版「八つ墓村」のほうが早かったようである。ただ脚本の上がりが遅く、映画と文庫本のいわゆるメディアミックスをやりたかった角川春樹がしびれを切らし、自分で映画作った方が早いとして角川春樹事務所を立ち上げ、映画制作に乗り出している。事実角川版「犬神家の一族」のほうが1年早く公開されている。

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