見出し画像

センスって言葉使っていいですか?

突然ですが、私はセンスの良い人を心底羨ましいと思うし、なんなら嫉妬するくらいです。お金持ち、容姿に恵まれている、なんてことにも、もちろん羨ましいという気持ちは抱くけれど、そんな感情を強く持っていたのは若い頃の話。歳を重ねると自分のあるべき場所、あるべき姿に折り合いをつけていくものですから。しかし、未だセンスの良い人を羨ましいと感じるのは、センスならなんとかなるんじゃないか、なんて思っているからかもしれません。持って生まれた分(ぶん)と違い、努力やらなにやらで後天的に補うことができて、いい線までいくんじゃないかと。

そんな訳でセンスに対する気持ちは、私の中で今もなおブスブスと変な燃え方をしているのです。インテリアのセンス、着こなしのセンス、贈り物のセンス、そんなところにセンスを発揮する人に私は本気で嫉妬します。もちろんその嫉妬は醜悪なものではなく、憧れが沸点に達した感じでなので、私の周りにいるセンス抜群の方、怯えないでください(笑)。

そして数あるセンスの中で、私が一番反応するのがずばり”言葉遣いのセンス”でしょうか。言い得て妙!などと膝を打つような上手い言い回しや洒落た表現、さらにはふとした拍子に会話を笑いに導く妙など、全ての根底にあるのはやはりセンス。そしてそれらを耳にする度、いったいどんな本を読んで、どんな映画を観てきたの?なんて詰問したくなるくらいの気持ちになるのです。もう一度言います。そんな私の周りにいるセンス抜群の方、怯えないでください(再笑)。

先日のこと。本屋さんパトロールをしている際に「センスのいらないインテリア」という本が目に飛び込んできて「ほほ~一周回ってそうきたか~」と感心しきり。しかしふと前を見ると大真面目にセンスを特集したある雑誌が並んでおり「なんだなんだ、このセンス解釈の二極化は?」と私の脳内は激しく混乱。私自身、一周回ってセンスってなに?となったのです。

実はセンスという言葉にいつも以上に敏感になっていたのには理由がありました。それは6月に出版する3冊目の本のタイトルに”センス”という言葉を入れるかどうかでずいぶん悩んでいたからなのです。

過去に出した本、1冊目「日々、センスを磨く暮らし方」にはセンスの言葉をタイトルにどど~んと使っています。2冊目はアート中心でセンスという言葉は直接的に使っていないものの、衣食住に加えアートを生活に取り入れましょう、といった生活全般におけるセンス向上を提案しています。その流れからいくと3冊目のタイトルにもセンスを入れるのは当然と言えば当然のこと。この執筆中、私の意見を第一に尊重してくださった編集者や版元の方とも意見を交わした結果、やはりセンスは入れた方がいいのではと落ち着きました。

しかしなぜ3冊目ではセンスという言葉にそんなに腰が引けていたのか?今回のテーマは本。インテリアやライフスタイルのように、大手を振ってセンスという言葉を使ってもOKな分野と違い、本にセンスって使うと”ちゃらい”と思われる?なんてちょっとびくついていたから。

アートの世界に飛び込んでから「あ~インテリアの人ね」と、ずっと言われ続けやや浮ついた感じの“ちゃらい”人の位置が確定してしまった経験もあり、本の世界でもそんな風に思われると辛いという気持ちも強かったのです。なんせこっちは文学少女時代を入れてうん十年というもの本を読み続けており、今回の本も大真面目に取り組んでいたのですから、ちゃらいって思われたくない。

そしてもうひとつ、あるトラウマの存在です。大昔、大学のゼミ(フェミニズム問題)の教授に「彼女は”ああ見えて“割とちゃんと考えてるわね」と評されたことがありました。”ああ見えて”???私って”ああ見えて”るんや、とその言葉は若く純粋であった私の心に棘のようにささり、今もなお頭の中に”ああ見えて”のフレーズがよぎることがあるのです。

”ああ見えて”=ちゃらい=アホ、、、悲しい。

なんだかセンスと全く違う話になってきたので、ぐいっと無理やり戻しましょう。本の本にセンスということばを使うとやっぱり”ちゃらい”って思われるよなあ、なんてウジウジ。でもしばらく経って「ちょっと待てよ、自分」と思い直しました。私はセンスという言葉に過剰反応する、その中でも言葉に対するセンスが一番上だと思っている節がある、、、ということは、本の本にセンスいう言葉を使っても良いのではないかと、はたと気づいたのです。

そしてやっと”ああ見えて”実は硬派な私は3冊目の本のタイトルに心から納得したのです。センスを入れても問題なし!

今まで読んできた本は数え切れず。きっと根底で私のいろいろなセンスに影響してるんだろうと思うと「センスを磨く読書生活 私たちは本でできている」という2フレーズから成る、いささか長いタイトルは本の真意を上手く伝えてくれるような気がしています。(伝わると嬉しい)

センスって言葉って上滑りしがちだけど、深いんだよなあ、としみじみ。何周回っても答えは見つからないよなあ。

そんなこんなで、アマゾンでも予約が始まった拙著をどうぞよろしくお願いいたします。(宣伝で〆るのか?センスゼロ)

注:使った画像はまさに一周回った感のセンスあふれる場所なんばの味園ユニバースの看板。先日初めて中に入りました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?