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雨の日の情景

その日は雨だった
窓から見える遠くの景色にあの日の光景が目に浮かぶ

⌜待って〜⌟
無邪気に姉たちを追いかけて走り回る
そこは草原で少し坂になっていていつも転んでいた

草木の匂いが今でもまだ記憶に残っている、あぁ、この匂いはあの頃の匂い

大人になって草原からはかけ離れた生活をしているせいか、とても新鮮に感じられる

そして学校から帰るとすぐ友達の家に遊びに行っていた。何故ならすぐ近くに海があったからだ

暗くなるまで友達と海で遊んでびしょ濡れになって家に帰りよく母に叱られていた

窓辺で椅子に座り子供の頃のことを思い出していた
窓ガラスが雨で濡れて遠くの景色が霞んで見えた

雨は嫌いじゃないよ、街の喧騒を消してくれる気がするから

いつか誰かがそう言っていたのをふと思い出した

なるほど、言われてみればそんな気がすると思った

ヤカンにお湯を沸かして紅茶を入れて飲んだ
テーブルの上には朝に焼いたクッキーがお皿の上に並べられていて3時のおやつに食べた。

夜中に急にクッキーを焼きたくなる時もあるのと誰かが言っていたのを思い出した

綺麗なハート型のクッキーを焼いた写真をSNSにアップしてた女性はきっと料理上手で美人さんなんだろうなと思った


ちょっとうとうとと居眠りをしていて目が覚めた

もう夕方で雨はまだ降っていた
窓から見える街には色とりどりの傘の花が咲いていた

竹内まりやさんの⌜駅⌟という曲がラジオから流れてきた

見覚えのあるレインコートと…

この曲を聴くたびに歌詞の情景が浮かんできて感情移入してしまう

時計の針はもう夜の六時を回っていた
早目にお風呂に入り夜は豆腐とナメコのお味噌汁と鯖の塩焼きとキュウリのお漬物を食べた

夜は手帳タイム
今日一日の出来事と思ったことを毎日書いている

そして空想にふけり、私はまた旅に出た

今度は電車に乗って子供のころによく遊んでいたあの草原まで行った

⌜待って〜⌟
私は一人で走り回った
誰もいないはずの草原に一人の女の子が歩いてるのが見えた

私は追いかけた
その女の子の方に向かって走った

でも姿が見えず私は諦めて帰ろうと後ろを向いた瞬間に目の前に女の子が立っていて驚いて目が覚めた

どうやら私は途中で眠ってしまったらしい

時計の針はもう10時を回っていた
雨音だけがシトシトとまたいつかの情景が目に浮かび静かに目を閉じた。


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