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【七峰】第一部『ゲームセンターCX 有野の挑戦状 1+2 REPLAY』再生されるゲーム少年の魂

 中学生の頃、「このゲームを作った会社に入りたい」と思うほどにあこがれたゲーム会社がふたつある。

『Contact』のグラスホッパー・マニファクチュア。
 そして『有野の挑戦状』のインディーズゼロだ。

 僕はゲームを作るより遊ぶほうが好きだったのでその夢は夢のまま終わったが、開発会社が変わりゲーム性やグラフィックが大きく変わったことで低評価となったシリーズ3作目には手を出さず、その後10年に渡って新作が作られなかったことが、いちゲームユーザーとしてずっと心残りだった。

 だからこそ、番組の20周年に合わせたリマスターの第一報には胸が沸き立つ思いがした。

 このまま当時の思い出を懐かしく語るのも悪くない。『挑戦状』はやりこみ中に突然すべてのデータが消えて、それでももう一度やり直したものの初回よりやりこみモードのゲームオーバー回数が極端に少なくなったり、『挑戦状2』のデモリタでちょっとしたバグ技を見つけて自分が攻略情報と感想を共有するために始めたYahoo!ブログに書いたけど、そのブログもデータ移行の機会を逃して今は跡形もなくなってしまい「16年ぶりに復活するなら残しておけばよかった……」と今さら後悔したり。

 しかし、それだけでは『1+2 REPLAY』に向き合ったとは言えない。

 この記事の題名に「ゲーム少年の魂」と書いたのは時流にそぐわないかもしれないが、あの時ゲームを(特に有野課長が挑んだ数々のレトロゲームを)愛した少年だった僕自身の魂を奮起させる言葉として選んだ。

「思い出は思い出」と、自分の現在の懐事情としては購入を先送りしたい向きもあったが、16年前より開発者とユーザーの距離が大きく縮まって感想が届けやすくなったことと、なにより発売直後からタイムラインに流れるプレイヤーの楽しそうな姿が答えだった。

 ゆえに僕は『1+2 REPLAY』DL版と地元の家電量販店に10年間置かれっぱなしだった『3丁目の有野』を買った。すべての『挑戦状』に決着をつけるために。

背ヤケに刻の涙を見る

『1+2 REPLAY』

 再訪したありの少年の感想は、茶の間が意外と広かったというところが印象的だ。なんか2,3人くらい布団敷いて泊まれそうな和室になっている気がする。「ありの少年割と裕福説」に一役買っている形だ。

違いを見れば一目瞭然
(3DSのドットバイドット機能で確認)

 ゲーム魔王アリーノーからの挑戦状は、あの頃は実力主義で使わなかった裏技ありでねじ伏せていく感じ。「ラリーキングのカンが鈍った」とか「Joy-Conの方向キーだとスタープリンスの自機が動かしにくい」とかぶつぶつ言いながら攻略してゆく。

マクドナルドのCMのように「アリーノーの挑戦状なんて、ペロリだよ」といきたかったが、最終的に以前『スマブラSP』のために買ったまま放置していたホリ クラシックコントローラー for Nintendo Switchを持ち出した

 不満点としては場面切り替え毎の読み込みが一拍「フリーズしたんじゃないか?」と心配になるような長さだというのと、DS版の目玉とも言えた「雑誌や説明書を読みながらゲーム」ができなくなっている(ゲーム画面⇔茶の間画面⇔説明書or雑誌画面と遷移し同時押しコマンドで切り替えることもできない)ところくらい。まあ前者は今後のアップデートに期待し、後者はメモ帳さえあれば事足りるので、それ以外は素人目にはDS版と遜色ない移植度に見える。

 次いでネット記事を読み、言われてみれば『有野の挑戦状』はピクセルパーフェクトの美学を貫いていたということを学ぶ。

 それでいて色数を抑えた独特なカラーパレットと、あと足りないものはスプライトのチラつきだと思わせるような「80'sコンシューマらしさ」に、「どうしてこれほどの作り込みにこだわるんだろう」と子供ながらに思ったものだ。その不思議は『ロックマン クラシックス コレクション』や『ナムコットコレクション』のようなパッケージや説明書の画像取り込みを含めたファミコンソフトの移植タイトルが当たり前の現代においても色褪せない。

 その企業努力には「たかがゲーム、されどゲーム」という言葉に次いでゲーム屋サンの背中からたちのぼる意地とか情念が思い浮かぶ。開発に携わる誰もが遊びに対して本気だったから、本気の中の本気みたいなゲームができたのだ、と。

一応「ラリーキングSP」コース2の挑戦は今でもDS版の2分28秒より大きく縮めることができた

 この記事を投稿する時点で未だ『1』のエンディングを見ただけだが、とにかく今作の開発スタッフに感謝の念を伝えるべく、記事をしたためた。

 オンラインランキングによって自分がどの程度のゲーマーか推し量る向きもあるが、ひとまずは10数年ぶりの再会に喜び…………そしていっさいの心残りを拭い去るつもりだ。

【第二部『3丁目の有野』編へつづく】

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