忍殺TRPGリプレイ【ニンジャ・アタックド・ヤクザ・オフィス】
ドーモ、@RIGNMです。これは下記のソロアドベンチャーのリプレイです。ネタバレにご注意ください。
前回までのあらすじ
しがないメキシコライオンの飼育員・ベノムラは全身から神経毒を噴出するカナシバリ・ジツを持つニンジャ、ポイズンシャドウとなった。
彼はニンジャ化の際メキシコライオンをジツで全滅させた責任をちらつかされる形でソウカイ・シンジケートという組織に所属し、そこで基礎的な研修を受けた。
◆ポイズンシャドウ(種別:ニンジャ)
カラテ 4 体力 4
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 1 脚力 2/N
ジツ 3 万札 0
近接/射撃/機先/電脳 -/-/-/-
回避/精密/側転/発動 -/-/-/-
緊急回避ダイス
即応ダイス
◇装備や所持品
・ZBRアドレナリン注射器:味方蘇生(使い切り)
◇ジツやスキル
☆カナシバリ・ジツLv3:毒系
○生い立ち:サイバネ賞金稼ぎ
◉知識:危険生物
背景タイプ『反骨心や嫌悪』
灰色のメガロシティ
重金属酸性雨が降り注ぐツチノコ・ストリート。ポイズンシャドウは片手でZBRアドレナリン注射器をガンスピンのように弄びながら、とある雑居ビルを目指していた。
デスシャドウ・ヤクザクランのデータセンター事務所に忍び込んでUNIXをハッキングし、コケシマート社の未公開株券を奪取すること……「ガキの遣いみてぇなビズだ」と彼は鼻を鳴らした。何か違いがあるとすれば彼の動向はソウカイヤに監視されていて、失敗すれば相応の社会的制裁が待っていることくらいだ。
だがポイズンシャドウは、ムラハチが怖くてビズから逃げ出すような腰抜けではない。彼は堂々と胸を張って路地を歩き、堂々とビルとビルの間に遮蔽を取ってヤクザ事務所の周囲を観察した。
事務所の玄関前には、ショットガン装備のクローンヤクザY-10型が1体。厳重に警戒している。
「フシュー」ポイズンシャドウは初仕事の前に大きく息を吐くと、呼吸を止め、クローンヤクザにスリケンを投げた!「イヤーッ!」
しかしスリケンは明後日の方向へ飛んでいった。クローンヤクザが敵襲と射線に気付く!
「ザッケンナコラーッ!」BLAMN! 警備クローンヤクザ発砲!
散弾がポイズンシャドウに迫る!
もし彼がモータルならば、これで危険なビズは終わっていたかもしれない。だがポイズンシャドウはニンジャだ! ならば……!
「イヤーッ!」ポイズンシャドウは瞬間的に大きく跳躍し、地上の散弾を回避したと同時に、空中で放物線を描きながらクローンヤクザの頭部にボレーシュートを叩き込んだ!「グワーッ!」
ヤクザ事務所を襲え
ポイズンシャドウは頭蓋骨を砕かれ絶命したクローンヤクザを一瞥もせず服を整え、事務所のドアノブをひねる。やはり鍵がかかっていた。
彼は高速で論理的に考える。さっきのカラテは調子がよかった。このテンションのまま強引にでもドアノブを破壊したい。しよう。
「オレサマはデーモンだ! こんなドアノブくらい、屁でもねえ!」
ポイズンシャドウはドアノブを強引に破壊し、景気付けにドアを蹴って事務所に侵入した。そしてUNIXの並んだ目的の部屋へ足を踏み入れた、その時!
「スッゾコラーッ!」警備クローンヤクザが1体、ドスダガーを構えて襲いかかってくる! ポイズンシャドウは待ってましたと言うように拳を構え、
「イヤーッ!」「グワーッ!」見事なカラテでクローンヤクザを殺し、その懐から万札をゲットした!
「物足りねえな。まあクローンヤクザが2体もいれば、非ニンジャが相手なら十分なのかもしれないが……」
彼は自分がニンジャになって以来、ニンジャと非ニンジャの世界の差を算数の問題と同じように考えることにハマっていた。だが目の前でちらつくUNIXの画面を前にして、余計な考えは吹き飛んだ。
これをハッキングして未公開株券をゲットすれば、ミッションクリアだ。
この時彼は株券データを盗むだけでなく、ヤクザクランの銀行口座をもハッキングすればアブハチトラズ(訳注:「一挙両得」の意か)と考え、UNIXに手を置き……しかし淡々と未公開株券データを狙った。
キャバァーン! UNIXは未公開株券をするりとポイズンシャドウに差し出した。
もっと時間をかければ銀行口座にも……と思った彼の耳にNSPD武装パトカーのサイレン音が近づいてきた。仕事の時間は終わったのだ。
彼は窓へ飛び出し、しめやかに犯行現場から姿を消した。
エピローグ
「フシュー」彼のガスマスク越しの吐息はまだ少し熱を帯びていた。
本当にどうってことないお遣いだった。彼の油断ない決断力とカラテで問題なく事は済み、事務所で奪った金目のものはそのまま自分の懐に入れることができた。何も不自由がない。しかし彼の目は笑っていなかった。
なぜか? それは彼自身が、よくわかっている。
「メキシコライオンのクソ掃除が、ヤクザ事務所のヤクザ掃除にすげ替わっただけだ。オレはニンジャになったってのに、この縦社会ってのは終わりがねえ。ならどうすりゃいいんだ? アー?」
そのままソウカイヤ批判とソニックブームへの怨み節をブツブツと呟くポイズンシャドウを「何かの中毒患者か?」と疎ましげに見たサラリマンに彼は手をかざし、汗腺からカナシバリ・ジツを一瞬吹きかける。
「アイ……アイエエエ!」ナムアミダブツ。サラリマンは強烈な硫黄臭に呼吸が困難になり、その場に倒れて痙攣を起こした。
「帰ってZBRでもキメるとすっか……」
手元のZBRアドレナリン注射器をスピンさせながら、ポイズンシャドウはウシミツ・アワーの闇に溶けていった。
【ニンジャ・アタックド・ヤクザ・オフィス】終