おしっこ

本日はベッドから離れられない患者の排便事情について記そうと思う。皆さんも離床できなくなったらこの記事を参考にしていただきたい。

僕は令和4年8月末に脳梗塞を発症し、後遺症として左片麻痺を授かりました。後天的な天与呪縛です。


僕は発症直後、ICUに入院し、24時間監視体制で治療を受けていました。「監視」と言うと大袈裟ですが、ガラス張りの部屋の中にベッドと僕だけが存在し、ドアの前に常に看護師さんがスタンバイしているような環境でした。ナースコールを押すと2秒で担当の看護師さんが来てくれます。マンガに出てくるような被検体Aの気分でした。


さて、人間の身体はお利口なものでこんな非日常空間の中でもしっかりと訴えてきます。「おしっこ、出ます。」と。しかし、僕は左半身が動かなかったのでトイレに行くことはできませんでした。おまけに大量の点滴が繋がれていたので、車椅子での移動も困難です。わしゃあ汚部屋のタコ足配線か。

となるとおしっこの手段は1つ、ベッド上で出すしかありません。僕は朧げに「入院すると尿道にカテーテルを入れられて、抜く時は原始的に引っこ抜くから超痛い」と記憶していたので、戦々恐々としていました。正直命よりも尿道の方が心配でした。そして迎える初排尿。僕は「ついにカテーテルを挿れられるんだ…」とビクビクしながらナースコールを押しました。が、結果として僕は尿道カテーテルを回避できました。人類の叡智は素晴らしいもので、この世には「尿瓶」なるものが既に発明されていたのです。これはその名の通りおしっこ専用の瓶で、ペットボトルにおしっこする感覚で排尿ができてしまう便利アイテムです。そう、尿瓶を使えばカテーテルを回避できるのです。パンツを下ろしてもらい、尿瓶の中にチンチンの先っちょを挿れてもらいました。これで発射の準備は完了なわけですが、、マジで出ません。皆さんは大人になってから頻繁にオネショをしますか?僕は小学校以来オネったことはありません。そんな人間にベッドの上で排尿なんてできるわけがないのです。オマケに看護師さんが目の前で僕のおしっこが終わるのを、今か今かと待っています。あの時の僕が脳内メーカーをやったらきっと「尿意」と「罪悪感」で埋まっていたことでしょう。あとはほんのちょっぴりの「恥じらい」。

「出そうですかね…?😅」
そろそろ秒針の音気になり出してきた頃、看護師さんは申し訳なさそうに聞いてきました。僕も申し訳なさそうに
「出る…とは思うんですけど…😅」
と伝えると、ヤツの存在がちらつきました。
「自分で出せないとカテーテル挿れなきゃいけないんで頑張りましょう!」
ウォールマリア、決壊。尿瓶の登場で安堵していた僕は、途端にここが既に戦場だったことに気がつきました。
「出さなきゃ、挿される」
僕は思い出したのです。カテーテルに支配されていた恐怖を。

その後の僕はもう必死におしっこを出そうと頑張りました。でも、おしっこって頑張って出すモンじゃないんですよね。どちらかというと自然と出てしまうものであって、だからこそガキンチョはオネショをしてしまうのです。いくら踏ん張っても、脱力してみても、これまでのおしっこハイライトを走馬灯のように想起してみても出ないモンは出ません。結局、看護師さんに一時退室していただいて発射に成功しました。僕の尿道は守られたのです。これにて一件落着。


これは完全に余談なのですが、尿瓶を当てられ続けてわかったことがあります。それは、人によって尿瓶の当て方に“上手い”“下手”が存在することです。おしっこさせてもらっている分際で生意気なのですが、これはガチです。“お上手な”方に尿瓶を当ててもらうと、おしっこが一滴も零れません。尿瓶側が、余すことなく僕のおしっこを受け入れてくれます。

反対に“あまりお上手ではない”方に当ててもらうと、あら不思議。小便の半分近くが尿瓶からこぼれ落ち、ヤンチャなベッドが爆誕します。齢23にしてお股もベッチャベチャです(笑)こうなってしまうと、放置しておくのは流石に不快なので看護師さんに「零れちゃいましたぁ」と申告して拭いてもらうのですが、これが恥ずかしいことこの上ないです。しかも追い打ちをかけるかのように、小便零し率は若い看護師さんに多い傾向にありました。ベテランとの経験の差でしょうか。棒の扱い方が違います。若い女性におしっこでビチャビチャな姿を見られるのは人としての尊厳が著しく欠落していきました。

さて、申告をすると大抵看護師さんは「いやめっちゃ零すやん(笑)」みたいな反応で拭いてくれます。ちゃうねん、俺が下手くそな訳じゃないねん。まぁ普通は「コイツおしっこ下手くそwww」と思いますよね。「毎回零すわけじゃないもん…🥺」そう思いながら、僕はちんぽこを拭ってもらうのでした。

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