「なりたい自分」を買った話
こんにちは。豆腐です。
先日、新しいバッグをお迎えしました。
出会い
有名すぎるそのバッグの存在はもちろん知っていた。その子の名前はMM6 ジャパニーズトート。自問自答ファッションを知る前、雨や夏用のバッグを探しているときに見つけた。メッシュ素材が軽やかでいいなと思った。夏用のバッグはレザー以外がいい。汗や日焼け止めで革が汚れて痛むのが嫌なのだ。
人が持っている姿は見たことがあったが試着したことはなかった。なのにメッシュのネイビーをネットで買ってしまおうかと考えたこともあった。
某セレクトショップで合皮のモデルに出会い、初めて試着をした。鏡の前に立ってみるがピンと来ない。私はやっぱりリアルレザーが好きなので、合皮にはときめかなかった。また、サイズが大きすぎるし、取り出し口が狭いし、使いづらいかもなぁという感想を抱いた。そもそも、私はショルダーバッグが好きなのだ。両手が開く方が雨の日も使いやすいからだ。やはりトートバッグ、しかもワンハンドルは使いづらいだろうなと思った。
3月末、母と一緒に訪れたギンザシックスのMM6で小さいサイズを持ってみた。大きさも丁度良く、大きい方より使いやすいかもしれないと思った。そのとき気になったのがメッシュのグレー。日本限定カラーだというそれは定番の黒とは違う印象だった。価格は2万円代だと思い込んでいたが、小さい方でも3万円を超えるので驚いた。
また、本体はメッシュ素材だが持ち手はリアルレザーということを知った!持ち手が日焼け止めで傷んでしまう。この時点で夏用バッグの候補から除外された。
……はずだった。
ずっと頭から離れないのだ。大きいし、口が小さくて使いづらそうだし、みんな持っていてかぶりまくるし、素材のわりに価格が高い。やなやつ!
そう、私は完全にしずくちゃん状態だった。
迷い
だんだん買わない理由を探すようになった。
サイズが大きすぎるよね。使いづらそうだよね。そもそも持ち手がレザーだから夏には使えないよね。など…。あまりにも有名すぎるデザインというのも、購入を躊躇った理由の一つだ。
いつからか、「このコーディネートにあのバッグがあればいいのにな」と考えるようになった。服を選ぶときも、持ってもいないバッグに合わせる前提で考えていることに気づいた。マルニのバッグを買った際もそうだったが、この思考になるともう買うしかないのだ。もうあの子を迎えるしかない。どこか諦めのような気持ちだった。
買おうと決めたら、別のことに迷い始めた。問題はサイズだ。小さい方でも十分荷物は入りそうだが、その分入口が狭い。大きい方がまだ口が大きくて取り出しやすそうだ。それにこのバッグはサブバッグと一緒に持たない方がスマートな気がした。(※あくまで個人的な意見です) だとすれば大きい方がたくさん荷物が入るからよさそうだと思った。
色も迷った。定番の黒ではなく、グレーが気になっていた。日本限定、シーズナルカラーのグレーは今買わなかったら今後手に入らないとのこと。それに最近購入した服は黒が多い。全身黒でまとめるのはなんだか気分ではなかった。この先もクローゼットに黒が増えていく気がしたので、グレーの方が重い雰囲気にならずに使える気がした。若干【限定】という言葉に惹かれていたことも否定できない。
もしグレーを買ってみてしっくり来なかったら黒を買い直したっていい。黒は定番色でいつでも買えるのだから。
購入
4月21日
たまたま仕事で銀座の近くに行ったのでギンザシックスに行ってみた。グレーを買うつもりで立ち寄った。目当てのバッグは店頭に出ていなかったので、店員さんに声をかけた。「一度品切れてしまって再度入荷したばかりなんですよ」と言って、店員さんが黒とグレーの両方を持ってきてくれた。
グレーを買うつもりだったが、一応黒も試着してみた。しかし両方ともいまいちしっくりこなかった。強いていうなら黒の方がまだ似合っていた。その日は取引先のところに行ったので、いつもよりかっちりした服装だったのが原因かもしれない。しかしこのバッグを持てる自信が一気になくなった。
やっぱり私の身の丈にあっていないバッグなのかも。そう思ってその日は買わずに帰宅した。
4月28日
大幅な部署編成が行われ、私はグループ会社へ移動することが決まっていた。4/28日は前の職場の最終出勤日だった。夕方ごろまでは社内にいる予定だったが、急遽用事が入り昼過ぎに会社を出ることになった。慌ただしく皆に挨拶をして会社を去った。午後は移動先の事務所で少し仕事をし、翌日から始まる店舗の催事の展示の最終確認をして退勤した。
ジャパニーズトートを買わずに帰宅した日から一週間、ずっとバッグのことを考えていた。使いこなせないかもしれないけど、どうしても欲しい。あの子を買うなら今日しかないと思い、銀座に向かった。伊勢丹で買えばエムアイポイントが使えるのだけど、初めて会った場所、ギンザシックスで買いたかった。
また黒とグレーの両方を試着したが、やはりグレーが欲しいと思った。最近買ったアンスリードの黒いワンピースとも合いそうだ。
黒と迷っていたこと。先週も来たが決められなかったこと。仕事のあとに立ち寄ったことを店員さんに話した。「本当に黒が欲しかったら、迷わず黒にされると思いますよ。迷っているということはグレーが欲しい気持ちがあるんだと思います」と店員さんに言われた。まさにその通りだと思った。
その日着ていたのは手放したいと思っているダークグリーンのワンピース。先週の服装よりまだバッグは似合っていた。
無事グレーのバッグを購入した。退店の際、店員さんに「お仕事のあと立ち寄り下さりありがとうございました」と見送られた。その言葉を聞いて、涙がこみ上げてきた。泣きそうなことを悟られないよう、店員さんに会釈をして店を出た。店を出た瞬間、涙がわっと溢れてきた。
今日が最終出勤日だった。会社という組織に所属している立場上、ずっと同じメンバーで、同じ環境で仕事できるなんて無理だと分かっている。変化はつきものだ。それでも、十年近く一緒にいたメンバーと離れるのがつらい。バラバラになるなんて耐えられない。苦しいときも、忙しいときもみんなで乗り越えてきた。来週から会えなくなるのがつらい。すごく寂しい。新しい環境が不安でたまらない。いろんな感情がこみ上げてきて、駅に向かう道のりを泣きながら歩いた。
ジャパニーズトートは、手持ちの服にぴったり合っているかというとそうでもない。私はたぶん「なりたい自分」を買ったのだ。洗練されていて、都会的で、装飾がなくシンプルで、それでいて有名すぎるアイコニックなこのバッグ。コンセプト通りの自分になれそうな、そんな気持ちにさせてくれるバッグ。これからこのバッグに合う服を選んでいきたい。
このバッグと新しい環境で頑張りたい。これは思い出と決意の演歌バッグだ。
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