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京都電気鉄道の面影を辿る京都旅

はじめに

1895年2月1日、七条停車場(京都駅)と伏見京橋の間に日本初となる電車を走らせた京都電気鉄道。その後、京都市内に路線網を拡大していったが、京都市電との競合に敗れ、1918年に京都市に買収され、車両と路線をすべて引き渡し解散した。
京都市による買収後、狭軌だった京電由来の路線は、市電に合わせて改軌されたり、並行する路線の整備により廃止されたりと、次々とその姿を変えていったが、堀川線(京都駅~北野)は1961年の廃止まで改軌・車両更新されることなく、最後までその姿を留めていた。そんな京電由来の路線も、1978年に木屋町線の一部が組み込まれていた河原町線が廃止されると全て姿を消した。

そんな京電の面影を探してきた記録。

梅小路公園

まずやって来たのは梅小路公園。
ここでは堀川線で活躍していた京都市電の27号車が動態保存されている。

京都市電27

こちらの27号車、元々は京電が1910年から11年にかけて製造した車両で、京都市による買収後は狭軌1型(通称N電)と呼ばれ、1961年の堀川線廃止まで活躍していた。

動態保存…とは言ったもの動力がリチウムイオン電池に改造されてり、架線のない線路を走っている姿は違和感マシマシだが、残っているだけヨシとしよう…。

京都市は歴史を前面に押し出している割には、こういった文化財の扱いがちょっと雑じゃない…?と思わなくもない…。

明治村で動態保存されている8号車
表記は1だが本当は8号車。

ちなみに明治村の8号車と15号車はポール集電のままで動態保存されている。なのでよりリアルな姿を見たいなら明治村へ行こう。(ダイマ)

ところで、梅小路公園には27号車の他にもう1両、いわゆる2軸単車と呼ばれる車両が保存されている。

京都市電29

それがこちらの29号車。
こちらは京都市が市電の開業に合わせて1912年に製造投入した車両で、狭軌の京電路線に対して、広軌の市電路線用の車両ということで広軌1型と呼ばれていた。

1912年当時、既に京都市内には京電による路面電車網が形成されていたが、市電の開業により京電は大打撃を被り、1918年ついに京都市に買収されるのであった…。

残念な改造された27号車とは対照的に、29号車は変な改造をされることもなく屋内で大切に保存されている。これが勝者と敗者の差なのだろうか…

堀川線(堀川中立売)

堀川通を北上し、次に向かったのは堀川中立売。
ここには堀川線(1961年廃止)の橋台跡が残っている。

写真では影になっていて少しわかりにくいが、堀川を斜めに渡っていた橋梁のレンガ造りの橋台が両岸に残っている。

現地には説明板も設置されており、こちらは文化財として大切にされているようである。

単線時代の橋台跡

ちなみに、開業当初の橋梁はコンクリートアーチ橋が架かっている部分にあった。幅が狭いことからもわかるように、当初は単線だった。

この当時、堀川中立売に到着した電車は、北野に向けて西へ90度向きを変えるため、転車台を使って向きを変えていたそうな。

複線化に合わせて、先に紹介した堀川を斜めに渡る橋梁が架けられ、転車台による方向転換は解消したようだ。

こんな破天荒なエピソードがいくつもあるから京電は面白い。

蹴上線(蹴上)

お次は洛中を横断し蹴上へ。

蹴上インクライン

蹴上の名所、蹴上インクラインの横に残るコンクリートの塊…

蹴上線架線柱跡

これこそが今回のお目当て。
その正体は1945年に休止(そのまま廃止)となった蹴上線の架線柱の跡だ。
架線柱本体やレールは梅津線の建設のため、すぐさま撤去されてしまったようだが、架線柱の基礎だけが、休止から80年近くを経てなお市電の存在を今に伝えている。

ちなみに、こんなマイナーでニッチなスポットが京都岡崎コンシェルジュのサイトで観光スポットとして紹介されている。なぜ…?
知らないうちに京都廃線ツーリズムの流れ来てる…?

この後は平安神宮へ。

京都市電2号

お目当ては神苑の中に保存されている2号車。
梅小路公園や明治村の車両とは異なり、こちらは堀川線廃止時の姿で保存されている。

数年前に路面電車としては初の重要文化財に指定されたとてもとても価値のある車両だが、状態は今一つ…といった印象。

もっと(29号みたいに)綺麗になって末永く保存されることを願っています…


木屋町線(木屋町五条)

お次は少し下って木屋町五条へ。

木屋町五条の交差点横、高瀬川の上にある牛若ひろばの下を覗いてみると…

何やら煉瓦の橋台が…
これはおそらく京都駅と木屋町二条を結んでいた木屋町線の橋梁跡。
木屋町線は並行する河原町線の開通により1927年に廃止となっているため、ほぼ100年前に消えた路面電車の痕跡ということになる(たぶん)。

そんなものが街中に人知れず眠っている京都、おそろしい街だ…
地面の下にはもっと古いものがわんさか眠っているけど

伏見線(下油掛)

ラストは電気鉄道始まりの地・伏見へ。

開業時の終着地・京橋(下油掛通)付近に建つ「我国に於ける電気鉄道事業発祥の地」の石碑でとりあえずゴール。

伏見のお酒をいただいて帰りました、おしまい。

参考文献

鉄道ピクトリアル 1978年12月臨時増刊号(京都市電訣別特集)
N電-京都市電北野線(RM LIBRARY (33))
京都市電が走った街 今昔(JTBキャンブックス)

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